2008年09月25日

麻生内閣発足、迫る衆院選暫定色濃く、10月解散にらむ、景気優先、補正成立急ぐ。

麻生内閣発足、迫る衆院選暫定色濃く、10月解散にらむ、景気優先、補正成立急ぐ。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生内閣が二十四日夜、発足した。これに先立つ組閣で麻生太郎首相は与謝野馨経済財政担当相らを再任、手堅さを重視すると同時に首相と近い議員も積極登用した。首相は景気対策を最優先し、今年度補正予算案の早期成立を目指す。そのうえで衆院解散・総選挙の時期を探るが、各党は十一月上旬の投票日を想定した臨戦態勢に入っている。新内閣は十月解散をにらんだ暫定的体制の色彩が濃い。

 同日召集の臨時国会は衆参両院が本会議で首相指名選挙を実施、麻生自民党総裁を指名した。野党が過半数を占める参院は一回目で投票総数の過半数を得た候補がおらず、決選投票で小沢氏を指名。両院協議会で意見が一致しなかったことから憲法に基づき、麻生首相が確定した。
 麻生内閣は二十四日付で発足。皇居での首相親任式と閣僚認証式は同日夜から二十五日未明まで続き、その後初閣議に臨んだ。麻生首相は組閣に伴い各閣僚に(1)国民本位の政策(2)官僚を使いこなす(3)省益より国益重視――の三点を指示した。
 二十四日の記者会見で首相は衆院解散・総選挙の時期について「(野党に)二〇〇八年度補正予算案の審議に応じてもらえるかどうかを勘案した上で考えたい」と述べた。同時に「補正予算をぜひ審議してほしいが(野党に)実行していただけるか疑問」とも指摘、野党の出方次第では成立前の解散断行もあり得るとの考えを示唆した。
 首相は国連総会出席のため二十五日から訪米。帰国後の二十九日に所信表明演説を行い、十月一日から三日間の各党代表質問に臨む。世論の動向などを見極めて解散時期を最終判断する構え。新内閣は次期衆院選をにらんだ急場しのぎの色彩が濃く、閣僚の人選も麻生氏との関係の近さや論功が重視されたとの見方が多い。次期衆院選では麻生カラーを前面に出して小沢一郎民主党代表との決戦に臨む構えだ。
 閣僚人事では十七人中五人が初入閣。小渕優子少子化担当相は戦後最年少の入閣。佐藤勉国家公安委員長も初入閣を果たした。文部科学相は塩谷立氏、法相は森英介氏が就いた。
 法相起用も検討された鳩山邦夫氏は調整の結果、総務相に就き、甘利明氏は行政改革担当相に回った。国土交通相に再任されるとの見方があった谷垣禎一氏は入閣を固辞し、後任には中山成彬氏が回った。
 麻生太郎首相は二十四日夜、首相官邸で閣僚名簿を発表すると同時に就任後初の記者会見に臨んだ。二〇一一年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する政府目標について「前提条件が大幅に狂ってきていることを無視できない」と述べ、必要に応じて見直す考えを明確にした。ただ「今すぐ(修正を)閣議決定するつもりはない」とも述べ、現時点での修正は否定した。
 首相は同日の会見で基礎的収支の黒字化目標について「持つことは間違っていない」としながらも、「(目標を設定した)あのころは金融問題もなかったし、原油の高騰という話もなかった」と指摘した。当面は景気対策を最優先すると強調し、臨時国会でも今年度補正予算の早期成立を目指す姿勢も示した。
 基礎年金の国庫負担割合を来年四月から二分の一に引き上げる政府方針にも触れ、「約束事は実施する」と明言した。一方、引き上げのために必要になる二兆三千億円の安定財源に関しては「今から財務相らと考えていかなければならない」と述べるにとどめた。
 来年一月に期限切れを迎えるインド洋での海上自衛隊の給油活動延長については「世界で最も期待されているこの仕事をぜひ、継続しなければならない」と訴えた。だが衆院での三分の二の多数を使って再可決し、成立させることに関しては「民主党の対応を見て決めたい」と語った。
 中川昭一財務相に金融担当相を兼務させることに関連し、財務省と金融庁の再統合の可能性について聞かれ、「やってみなければ分からない。現実問題としてどう仕事ができるのか見た上でないとなんとも言えない」との考えを示した。

党幹事長、外相、総務相(68歳、学習院大=衆(9)福岡8)(無)
法相、労相、文相(60歳、東大=衆(10)福岡6)(津)
党総務副会長、厚労副大臣(60歳、東北大=衆(6)千葉11)(麻)
参院予算委員長、首相補佐官、文相(62歳、慶大=参(4)群馬)(伊)
党政調会長、農相、経産相(55歳、東大=衆(8)北海道11)(伊)
官房副長官、衆院国交委員長(58歳、慶大=衆(5)静岡8)(町)
党参院政審会長、参院外交防衛委員長(59歳、東大=参(2)比例)(無)
防衛相、防衛庁長官、農水政務次官(51歳、慶大=衆(7)鳥取1)(津)
党総務会長、経産相、運輸相(69歳、中大=衆(8)和歌山3)(二)
文科相、経産副大臣(65歳、東大=衆(6)宮崎1)(町)
党政調会長、衆院文科委員長(56歳、東工大院=衆(5)比例中国)公明
衆院安保委員長、防衛副長官(52歳、専修大=衆(5)千葉12)(無)
党政調会長代理、文科相(65歳、慶大=衆(6)山口3)(伊)
総務副大臣、衆院総務委員長(56歳、日大=衆(4)栃木4)(古)
官房長官、経財・金融相、党政調会長(70歳、東大=衆(9)東京1)(無)
経産相、衆院予算委員長(59歳、慶大=衆(8)神奈川13)(山)
党消費者問題調査会長、郵政相(48歳、上智大=衆(5)岐阜1)(無)
党広報局長、文科政務官(34歳、早大院=衆(3)群馬5)(津)
 ▼閣僚の兼務・担当 総務相=地方分権改革▽国家公安委員長=沖縄・北方対策、防災▽甘利特命相=規制改革、公務員制度改革▽野田特命相=科学技術政策、食品安全▽小渕特命相=男女共同参画

官房副長官
 政務 衆    松本  純58
 政務 参    鴻池 祥肇67
 事務      漆間  巌63
法制局長官=再任 宮崎 礼壱63
 〈表の見方〉氏名、略歴、カッコ内は年齢、出身校、当選回数、選挙区の順。自民派閥の略称は(町)=町村派、(津)=津島派、(古)=古賀派、(山)=山崎派、(伊)=伊吹派、(麻)=麻生派、(二)=二階派、(無)=無派閥

衆院解散(きょうのことば)
▽…憲法7条は天皇の国事行為の1つとして「内閣の助言と承認」による衆院の解散を挙げており、解散権は首相の専権事項と解釈されている。憲法69条は衆院で内閣不信任決議案が可決されるか信任決議案が否決された場合、10日以内に衆院を解散するか内閣総辞職しなければならないと定めている。
▽…衆院議員の任期は4年間。衆院が解散されると、衆院議員は任期が残っているとしても資格を失う。参院は閉会となり、会期も終了する。衆院選は総選挙と呼ばれ、解散後40日以内に実施される。

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「麻生ワンマン人事」波紋、「盟友優遇」に派閥反発、町村派などにしこり。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 二十四日に発足した麻生内閣は、目玉人事の少なさから逆に麻生太郎首相一人が際立つ一方、自らの盟友らを優遇する「ワンマン」人事となった。「親麻生」ばかり並ぶ布陣には最大派閥・町村派などが反発、閣僚リストは当初案から修正を余儀なくされた。「選挙の顔」としての首相への期待は強いが、支持率次第で政権の求心力が一気に低下しかねない。

 二十四日朝、麻生首相の人事構想を伝え聞いた町村派内は大騒ぎになった。リストに所属議員が一切見あたらなかったからだ。福田改造内閣の一人から三人に増えた伊吹派とは対照的だった。中川昭一、甘利明、鳩山邦夫各氏ら麻生首相と親密な議員、文教族の麻生首相に近い文相・文部科学相経験者も主要ポストにずらりと並んでいた。
 麻生首相は小泉純一郎元首相のように派閥の意向に耳を貸さない人事にこだわったフシがある。しかし、それを「冷遇」と感じ取った町村派は巻き返しに動いた。
 「どうなってるんだ。首相指名選挙で町村派が小沢一郎と書いてもいいのか」。首相指名を目前に控えた二十四日午後の衆院本会議場。町村派事務総長の中山成彬氏は、官房長官に内定していた河村建夫氏に近づき、激しく抗議した。
 町村派は当選六回議員二人の初入閣を最優先に求めてきた。しかし、麻生首相は中山氏に行政改革担当相での再入閣を提示した。
 「ウチは私も妻も息子も大蔵省(現・財務省)の公務員一家だ。行革相なんてできるわけない」。中山氏は同僚議員に不満をぶちまけた。三十分後、中山氏のポストは国土交通相に差し替えられた。結局、同派からは福田改造内閣と同じ二人が入閣したが、幹部は怒りを隠さない。「こういう仕打ちを受けるなら、町村派は反主流派だな」

「小泉路線」薄く
 同じく「入閣ゼロ」に危機感を強めた古賀派は幹部がポスト取りに動いたが、獲得したのは一ポスト。伊吹派とやはり明暗を分けた。
 小泉純一郎、安倍晋三両首相時代に主流派として政権を支えた「上げ潮派」の姿もない。小泉構造改革が党内ではすでに「過去」になりつつあることを印象付けた。
 麻生首相にも誤算があった。組閣前日の二十三日夜の段階で「甘利総務相」「鳩山法相」「森英介文科相」らを固めたところ、鳩山氏が二度目の法相就任に難色を示したことだった、と周辺は明かす。そのあおりを受けて甘利氏は総務相、国土交通相、行革相とポストがくるくると変わった。
 麻生派の鈴木恒夫氏の後任の文科相に森氏を充てる案は「派閥順送りはしないと言いながら、自派閥だけ順送りは良くない」と批判が出たため、白紙に戻った。

参院側揺さぶる
 麻生人事は参院自民党も揺さぶった。「参院枠に関与できなかったのは一九五五年の立党以来初めて」(幹部)。有力議員の青木幹雄前参院議員会長と距離がある中曽根弘文外相の起用は「当てつけ」との観測もあり、「参院の影響力低下が決定的になった」との見方が広がる。
 「選挙の顔」に盾突くのは難しい――。自民党にはこんな空気が覆っていたが、麻生人事は党内のあちこちに波紋を広げた。「選挙が終わるまでの人事だ」。青木氏は周辺にこう漏らした。


投票日巡り駆け引き、「11月2日」と「9日」、与党内では両案有力。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生内閣の発足を受けて、衆院解散・総選挙の日程をめぐる与野党の駆け引きが本格化する。与党内では「十月二十一日公示―十一月二日投票」「十月二十八日公示―十一月九日投票」の二案が有力。十一月三日投票の案もある。総合経済対策に伴う二〇〇八年度補正予算案をめぐる民主党の対応が当面の焦点になる。
 「衆院解散の時期は(野党が)補正予算の審議に応じていただける、いただけないを勘案した上で判断する」。麻生太郎首相は二十四日の記者会見で、補正予算案に対する野党への対応を見極める考えを強調した。
 米金融不安の影響に懸念が広がるなか、中小零細企業の年末の資金繰り支援策などを盛り込んだ補正予算案を審議もせずに衆院解散に踏み切れば「無責任」とのそしりも免れない。自民党幹部は二十四日夜、「衆院では審議入りするが、成立するかどうかは野党の出方次第だ」と語った。
 公明党は十一月上旬の衆院選を想定して準備を進めている。同党幹部はすでに自民党側に「十一月二日よりも九日投票の方が望ましい」と伝えた。公明党の太田昭宏代表は二十四日、衆院解散の日程について記者団に「(麻生首相が国連総会から)帰ってきてから話をしたい」と語った。


新政権の外交課題、給油問題など日米に火種も。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生太郎首相が最優先で対応を迫られる外交課題は、アフガニスタンでの対テロ作戦への協力を巡ってきしむ対米関係のかじ取りだ。来年一月に期限切れになるインド洋での給油活動は継続のメドすら立っていない。米国はアフガン本土への自衛隊派遣など一段の貢献を求めており、両国には火種がくすぶる。外相経験もある首相が打開策を見いだせるか、早速手腕を試されそうだ。
 首相は二十五日午後、国連総会出席のためニューヨークに向けて出発する。首相としては三年ぶりとなる一般討論演説に臨み、テロとの戦いに貢献する考えなどを表明する。
 政府はイラクに派遣中の航空自衛隊の年内撤退を決めており、残された自衛隊の対テロ協力は給油活動だけになる。首相は活動を延長する法案の成立をめざす構えだが、衆院解散・総選挙が迫る中では困難な状況だ。


閣僚名簿、首相自ら発表、「日本明るく強い国に」。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生太郎首相は二十四日夜、首相官邸で閣僚名簿を自ら発表、そのまま就任後初の記者会見に臨んだ。「日本を明るく強い国にするのが私の使命だ。私の持つ経験のすべてを尽くして難題に立ち向かう」と決意表明した。
 閣僚名簿発表は官房長官の仕事だが、首相は自身の言葉で国民に語りかけた。「人事は色々あるが、適材適所が常に基本。このメンバーで選挙を戦う。正々堂々と戦う」。民主党への対抗意識をむき出しにした。


閣僚指示書、異例の修正、後期高齢者医療巡る表現、「抜本的な改革」に与党幹部反発。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 二十四日の組閣本部では麻生太郎首相が舛添要一厚生労働相へ手渡す指示書の内容に与党幹部から異論が相次ぎ、土壇場で書き直される一幕があった。指示書が与党の要求で訂正されるのは「近年では例がない」(自民党幹部)。
 指示書の原案で問題化したのは、後期高齢者医療制度について「抜本的な改革」をするとした部分。「抜本的というのは言い過ぎだ」との声が公明党を含めた与党幹部から相次ぎ「必要な改革」を実施するとの表現に書き換えられた。


日米首脳会談、早期開催で一致、米大統領と電話協議。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生太郎首相は二十四日夜、ブッシュ米大統領と電話で協議した。両首脳は日米同盟の強化に向けた協力を確認したほか、できるだけ早く首脳会談をすることで一致した。首相就任に祝意を伝えるため、米側が申し入れた。

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首相会見の要旨、給油活動、当然の責務、ねじれ打開へ政党間協議
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 二十四日の麻生太郎首相の記者会見の要旨は以下の通り。

◆冒頭発言
 総理の重責を担う重みを改めて感じている。特に景気への不安、生活への不安、政治への不信という危機を厳しく受け止めている。日本を明るく強い国にすることが私に課せられた使命だ。経験すべてをもって、身を尽くし、この難題に立ち向かうことを誓う。

 【各閣僚の重点課題】
 総務相=地域の元気を回復させる。地方分権改革は国の形を決める大事な政策。
 法相=司法制度改革を進める。
 外相=日米同盟の強化や北朝鮮問題、テロとの戦いに取り組む。
 財務相兼金融担当相=補正予算の成立や景気対策、サブプライムローン問題に端を発した一連の問題に取り組む。
 文部科学相=教育の信頼回復と基礎教育の充実が重要。
 厚生労働相=社会保障の問題や食の安全確保、雇用の安定が大事。
 農相=事故米対策のほか、食料自給率の向上に取り組む。
 経済産業相=リーディング産業の育成や資源外交、目先の中小零細企業の問題に取り組む。
 国土交通相=道路特定財源の一般財源化に取り組む。
 環境相=環境問題を主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で扱った経緯もあり、頑張ってもらう。
 防衛相=テロとの戦いが大事。
 官房長官兼拉致担当相=私を補佐すると同時に拉致問題にあたる。
 国家公安委員長兼沖縄・北方対策、防災担当相=凶悪犯罪防止や局地的な豪雨対策、沖縄の振興などに取り組む。
 経済財政担当相=財務相とともに全体のバランスを取って、景気回復策をお願いする。
 行政改革担当相=公務員制度改革や規制改革は進める。
 消費者行政担当相=福田内閣が積み残した食の安全確保と消費者庁(創設)に取り組む。
 少子化担当相=待機児童ゼロと若者支援などをお願いする。

 【全閣僚への指示】
 一つは国民本位の政策を進めること。二つ目は官僚を使いこなすこと。三つ目は国益に専念すること。これが一番だと思っている。
 ――内閣の布陣を見ると首相の人脈で固めた印象が強いが、どう選挙に挑むか。
 人事の配置は適材適所が常に基本だ。それが国民の期待に応えることだ。基本的にこのメンバーで選挙も戦う。どう戦うかといえば正々堂々と戦う。
 ――民主党が補正予算案の審議に応じる考えを示しているが、いつまでに成立させる考えか。衆院解散・総選挙の日程についてはどうか。
 少なくとも緊急総合経済対策で今の不景気に対応する。特に年末の資金繰りに頭を悩ませている中小零細企業などが抱えている問題は、原油の高騰やサブプライムローン問題に端を発した。明らかに今年に入って不景気だ。どう対応するか考えなければいけない。
 補正予算はぜひ審議をしてほしい。審議をしてもらえればありがたいと思っているが、この一年間見ていて、度々約束は裏切られてきたような感じがする。野党の参院の方からいろいろな発言があるが、実行してもらえるかどうかは私としては疑問だ。衆院解散・総選挙の時期は審議していただけるかどうかを勘案した上で考えたい。
 ――インド洋での海上自衛隊の給油活動の期限が来年一月に切れる。衆院再議決を含めどう対応するか。
 日本が輸入する石油の九割近くがインド洋を通過する。海上からのテロへの支援を阻止するために我々は海上給油活動に参加している。
 これはアフガニスタンや米国、パキスタンのためでもない。テロと断固戦うのは、国際社会の一員として当然の責務であり、日本に一番期待されている部門だ。世界で最も期待されているこの仕事は、ぜひ継続しなければならない。
 衆院の再議決を使うかどうかは相手のある話だ。もう少し、民主党の対応を見てから決めたい。
 ――中川昭一氏に財務相と金融担当相を兼任させた理由は。財金分離論への批判か。
 今、世界中で金融危機といわれている。この問題を世界中で検討する財務相会議で「金融はうちは関係していないんです」という閣僚はほかの国にはいない。私はこの金融危機が起きた時から、ぜひ兼務すべきであると思っている。(財務省と金融庁を)一つにするかは、やってみなければ分からないと思う。
 ――政府が掲げる二〇一一年度の基礎的財政収支黒字化目標を先送りする考えはあるか。
 目標を達成するための前提条件として経済成長を三%とみていた。今はマイナス三%になるかもしれないという状況。目標を決めた時は金融問題もなかったし、原油の高騰もなかった。目標としてきちんと持つことは決して間違いではないが、達成するための前提条件が大幅に狂ってきていることを無視はできない。今すぐ閣議決定をして、目標を修正するつもりはない。
 ――基礎年金の国庫負担割合の引き上げは予定通り実施するか。安定財源はどう確保するか。
 約束事であるから来年の四月から実施する。財源は今から財務相らと考えていかねばならないと思う。
 ――対決姿勢を強める民主党の小沢一郎代表に対し、党首討論など政党間協議の実施の是非を争点にしようとの考えはあるか。
 少なくとも今、参院と衆院がねじれた状況にある。世界中にはそういう国はあるが、国民に真に必要なものについては政党間協議がなされて合意できている。我々はそういう状況ではなく、国民が不満を持つところだ。
 少なくとも二大政党を目指して小選挙区制度を採用したのだから、我々はきちんとした対応を取るために、政党間協議や党首討論は必要だと思う。これはぜひ訴えていかねばならない。


34歳小渕氏、戦後最年少、平均年齢若返り58.2歳。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊,

 麻生新内閣の閣僚の平均年齢は五十八・二歳で、福田改造内閣の組閣時の六十二歳に比べて三・八歳若返った。戦後最年少の三十四歳で入閣した小渕優子少子化担当相、四十八歳の野田聖子消費者行政担当相らが大きく引き下げた。
 今回の最年長は留任した与謝野馨経済財政担当相で七十歳。
 小渕内閣以降で、平均年齢が最も低いのは二〇〇四年九月発足の第二次小泉改造内閣で五十七・六歳。最も高かったのは第二次森内閣の六十六・一歳だ。
 女性は野田消費者相、小渕少子化相の二人で、安倍、福田両内閣と同じだった。


民間出身閣僚、2年ぶりゼロ。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生太郎首相は二十四日の組閣で、学識経験者や経済界出身者など「民間閣僚」の登用を見送った。民間出身者を起用しなかったのは、二〇〇六年九月までの第三次小泉改造内閣以来。自民党総裁選で首相を支持した議員への「論功行賞」や親密な議員を重用するため、民間人にポストを割り振る余裕がなかったもようだ。
 安倍、福田両政権では民間閣僚がそれぞれ二人いた。最近では、〇一年四月発足の第一次小泉内閣で竹中平蔵経済財政担当相ら三人を起用したのが目立つ。今回は衆院選が近いとの観測もあり、入閣による知名度向上が期待できるとの見方がある。ただ、民間閣僚の登用には支持率を上げる効果があるとされ、損得勘定は不透明だ。


世襲議員18人中11人、父や祖父が首相、中曽根氏ら4人。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 新内閣の特徴の一つは、“世襲議員”の多さだ。新内閣の十八人のうち、父親や祖父が国会議員で、選挙地盤などを引き継いだのは、麻生太郎首相を含めて十一人に達した。
 このうち首相経験者の父親、祖父を持つのは四人。中曽根弘文外相、小渕優子少子化担当相は父親が首相を務めた。麻生首相と鳩山邦夫総務相は祖父が首相経験者だ。
 麻生首相自身は意識していないかもしれないが、自らと似た境遇のエリートが集まった格好となった。


閣議時の着席順、与謝野氏2番手。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生内閣の官邸閣僚応接室での席次が二十四日決まった。ナンバー2の席とされる麻生太郎首相の左隣には与謝野馨経済財政担当相が座る。右隣は鳩山邦夫総務相。


官房副長官補は福田・林氏内定。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 政府は二十四日、内政担当の坂篤郎官房副長官補と外交担当の河相周夫官房副長官補が交代する人事を内定した。後任には福田進元国税庁長官、林景一外務省官房長をそれぞれ充てる。河相氏は林氏の後任の官房長に就く。河相氏は七月三十日の就任から約二カ月での交代となる。
 福田 進氏(ふくだ・すすむ)71年(昭46年)東大法卒、旧大蔵省へ。財務省主税局長、国税庁長官、07年日本損害保険協会副会長。奈良県出身、60歳。
 林 景一氏(はやし・けいいち)74年(昭49年)京大法卒、外務省へ。国際法局長、アイルランド大使、08年官房長。山口県出身、57歳。


官房副長官に松本・鴻池氏。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 麻生太郎首相は二十四日、政務担当の官房副長官として衆院から松本純氏、参院から鴻池祥肇氏をそれぞれ起用する人事を決めた。
〈政務担当 衆院〉 松本 純氏(まつもと・じゅん)東京薬科大卒、党副幹事長。神奈川1区、当選3回、58歳。麻生派
〈政務担当 参院〉 鴻池 祥肇氏(こうのいけ・よしただ)早大卒、防災担当相、参院予算委員長。参院兵庫選挙区、当選3回(衆院2回)、67歳。麻生派


福田内閣365日、歴代7番目の短さ。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 二十四日午前の閣議で辞職した福田康夫前首相の在任は三百六十五日となり、現憲法下の二十七内閣では片山哲氏(二百九十二日)に次ぐ、歴代七番目の短さだった。父の赳夫氏(七百十四日)のおよそ半分。安倍晋三元首相に(三百六十六日)一日及ばなかった。
 首相は閣議後の閣僚懇談会で「短い間だったが、ありがとう」と各閣僚をねぎらい、午後一時前に首相官邸を後にした。
 福田内閣は昨年九月二十六日に参院で野党が過半数を握る「ねじれ国会」下で発足。「背水の陣内閣」。自らの内閣をこう名付け、国民目線の行政と円滑な国会運営を主眼に置いた。
 だが、局面打開の切り札だった民主党の小沢一郎代表との大連立協議は頓挫。その後は、日銀総裁人事などを巡り難しい国会運営に翻弄(ほんろう)された。


(社説)麻生内閣「背水の陣」の決意伝わるか。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 臨時国会が召集されて自民党の麻生太郎総裁が首相に指名され、新内閣を発足させた。実質的には総選挙までの選挙管理内閣である。麻生首相自身「総選挙で民主党に勝ち抜かなければ、天命を果たすことができない」と語っている。選挙に勝てば本格政権の道が開けるが、負ければ超短命政権に終わる。麻生新内閣こそ「背水の陣内閣」である。
 麻生内閣発足で前回二〇〇五年の総選挙以来、三回も内閣が交代したことになる。政権のたらい回しは限界であり、新内閣は速やかに衆院を解散して民意を問うことが求められている。
 新内閣が発足早々、衆院解散に踏み切る例はあまりない。麻生首相の祖父・吉田茂が一九四八年、芦田連立内閣崩壊後に第二次吉田内閣を発足させ、直後に衆院解散に踏み切り、総選挙に大勝して、その後の長期政権の基盤を築いたのが唯一の例だろう。次期総選挙は自民党が勝つか、民主党が勝つか予断を許さない情勢だ。麻生内閣は極めて緊迫した政治状況の下で船出した。
 麻生首相は自分で組閣名簿を発表し、指導力発揮へ前面に出る姿勢を見せた。政権の要である自民党幹事長に町村派の細田博之氏、内閣官房長官には伊吹派の河村建夫氏を起用した。両氏とも麻生首相や森喜朗元首相に近く、実務能力や人柄の良さが買われた。
 財務相には財政出動論者の中川昭一氏(伊吹派)、総務相に鳩山邦夫氏(津島派)、行革担当相に甘利明氏(山崎派)を起用し、総裁選圧勝の原動力となった各派の「親麻生」有力議員を論功行賞で処遇した。こうした人事で首相の「背水の陣」の決意が有権者に伝わるのだろうか。
 中川財務相は金融担当相も兼務する。「財政と金融の分離」の原則から従来は別の閣僚が金融担当相を務めていた。米国発の金融危機に各国と連携して機動的に対処する目的なら、財務相と金融担当相の兼務は必ずしも否定すべきことではない。ただ、今回の兼務をきっかけに財政と金融の一体運営をめざす狙いがあるとすれば、極めて問題である。
 麻生首相は国連総会出席のため訪米し、帰国後の二十九日に所信表明演説を行い、その後、各党の代表質問に臨む。首相は景気対策を重視し、補正予算を成立させた上で、衆院解散に踏み切りたい意向を示している。そのためには民主党の協力が不可欠である。首相は小沢一郎代表に党首会談を呼びかけるべきである。民主党も補正予算審議への協力を拒んではならない。

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麻生内閣発足、財政再建に不透明感、中川財務・金融相、「景気、最大の課題」。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 二十四日発足した麻生太郎内閣では、小泉政権以来の内閣が最重要課題に掲げてきた財政健全化の優先順位が下がり、景気対策重視の姿勢が強まりそうだ。財務相には「財政出動派」の中川昭一氏が就任。「景気をよくすることが、私にとって最大、最初にやるべきことだ」と述べ、景気対策を最優先する姿勢を打ち出した。近づく衆院選をにらみ、財政出動を求める声が強まりやすい中、財政再建路線の先行きには不透明感が漂う。(1面参照)

 中川財務相は二十四日夜の首相官邸での記者会見で「経済を回復し、国民の暮らしや仕事を元気にすることによって、財政再建をなし遂げなければならない」と強調し、財政再建よりも景気対策を優先する考えを表明した。
 一方で、二〇一一年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するとの目標については「捨てたわけでは決してない。なんとしても実現したい」と強調し、当面は目標を維持する姿勢を示した。景気回復で成長率が高まれば「目標が達成できる」との見通しを示した。
 再任された与謝野馨経済財政担当相は同日の記者会見で財政再建路線について「方向性を変えるということはないと考えている」と指摘した。
 黒字化目標を巡っては、麻生首相が八月上旬に先送りを示唆。中川財務相もこれまで「目標達成に固執すべきでない」との発言をしてきた経緯がある。
 景気対策については、麻生首相が緊急総合対策を実行するための補正予算の早期成立を図るよう中川財務相に指示。二十四日開会した臨時国会での成立を目指す構えだ。ただ衆院の解散・総選挙も絡み、民主党との調整の行方は見えない。
 選挙をにらみ、与党からの歳出膨張圧力は高まりやすくなる。二十四日の記者会見でも中川氏は景気対策について「必要があればさらなる対策が必要」と指摘。「できれば赤字国債は発行しないほうがいい」としつつも、追加的な財政出動も視野に入れる考えをにじませた。財政出動が膨らめば、財政再建路線が棚上げされる懸念も出てきそうだ。
 与謝野経財相は麻生首相から再任にあたって「中長期的な税のあり方、福祉のあり方等について、国民に示す必要がある」との指示を受けたことを明らかにした。麻生首相はすでに今後三年間は消費税率を据え置く考えを表明。年末にかけての税制改正論議で、どこまで具体的な姿を描けるかが焦点となる。
 「私直属の検討会を直ちに立ち上げ、明日からでも議論したい」。再任された舛添要一厚生労働相は、七十五歳以上が対象の後期高齢者医療制度の見直しに動き出す。「早急に具体化への手順を踏みたい」と強調。学者ら有識者の会議の初会合を二十五日にも開く。次期衆院選が間近に迫るとの見方が強いなか、短期間で「実績」を作る思惑がある。
 後期高齢者医療制度について舛添氏は自民党総裁選前に突然、代替制度の検討を表明。麻生首相も「抜本的な見直し」に言及した。十月十五日に年金からの保険料天引きの対象が広がることも、方針転換を後押しした。
 厚労相は直属の有識者会議で医師不足対策などの議論を主導してきた。座長には塩川正十郎元財務相が浮上している。だがどこまで具体策を描けるかは不透明だ。
 厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額の改ざん問題も解明は急務。来年度は基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げが控えるが、財源のメドは立っていない。
 伊吹文明前財務相は二十四日の退任記者会見で、麻生政権への注文を問われ「社会保障の財源を選挙の争点として明確に打ち出すべきだ」と語った。民主党が予算の組み替えで二十二兆円の財源確保を唱えていることには「現実問題できない」と指摘、「国民負担を増やさなければ社会保障費の動向には追いつかない」と述べた。
 地球温暖化問題では、二〇一三年以降の温暖化ガス排出削減の国際的枠組み(ポスト京都議定書)交渉で、十月から閣僚級会合が順次開催される予定。斉藤鉄夫環境相は「選挙戦と重なるかもしれないがしっかり進める」と述べた。日本が提唱する温暖化ガス削減手法である「セクター別アプローチ」の浸透や、米国や中国、インドを含む実効性のある枠組みづくりを主導できるかが試される。
 十月からは国内排出量取引制度の実験が始まる。産業界には本格導入に慎重な意見が多く、指導力が問われそうだ。
 二階俊博経済産業相は安定したエネルギー供給に向け「戦略的な資源外交を展開する」とした。通商政策では世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の進展や経済連携協定(EPA)の拡大も焦点だ。
 【成都=馬場燃】日本経団連の御手洗冨士夫会長は二十四日、発足した麻生太郎内閣について「実行力にあふれた政策通が多数配置されている」とのコメントを出した。新内閣には「まず足元の景気を立て直すこと」を求めた。経済同友会の桜井正光代表幹事は「緊急経済対策の実現と総選挙をにらんだ布陣」との談話を公表。日本商工会議所の岡村正会頭は「総選挙は政策選択になるが、まず与党が中長期的課題を解決する政策を示すべきである」とのコメントを発表した。
 経団連で政治対策委員長を務める大橋光夫氏(昭和電工会長)は二十四日、訪問先の中国で「自民党の復活というより、日本の復活につなげてほしい」との期待を示した。
 麻生内閣人事の目玉は、中川昭一・元自民党政調会長による財務相と金融担当相の兼務だ。麻生首相は二十四日、「財務相の(国際)会議でウチは金融は関係ない、という大臣はほかにいない」と説明した。深刻化する金融危機収拾に向け国際協調を進めやすくなる面もあるが、権限・責任が肥大化し、兼務大臣の機動力がかえって低下しかねない。
 金融行政を巡っては、証券・銀行不祥事を受けた批判の高まりから一九九八年十二月、金融再生委員会が発足。中央省庁再編に伴い二〇〇〇年に金融の企画立案機能も財務省から金融庁に移した。金融庁が分離独立して以来、初めて財政・金融行政が一体となる。
 旧大蔵省の権限縮小と監督行政の透明化には必然の結果だったともいえるが、金融危機の状況下では弊害も出ていた。
 欧米では金融企画機能は財務省が握っている場合が多い。リーマン・ブラザーズ破綻など危機対応で緊迫する米の司令塔はポールソン財務長官だ。危機対応は財務省の国際通貨システム安定化や中央銀行の金融政策と不可分なのが現実だ。
 ところが、日本は分離の結果、財務省はグローバルな金融再編など最新情勢にやや疎い。金融庁は各国政府の窓口である財務省とパイプが太いとはいえず、金融担当相は七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議にも出席できない。
 中川兼務相は十月にワシントンでのG7財務相・中銀総裁会議にデビューする見込みで、財務省内では「国際的なメッセージの発信力が強まる」(幹部)との声が出ている。
 もっとも金融庁の表情は複雑。ベテラン職員の中には「財務省の傘下に再び入るイメージになり、やりづらい」との本音も。
 麻生首相は「(財務省、金融庁を)一つにするかは、やってみなければ分からない」とも述べ、今後波紋が広がる可能性もある。異例の財金兼務で金融有事に力を発揮できるかは、中川氏の力量にかかる。
 農相に起用された石破茂元防衛相は二十四日、官邸での記者会見で、農薬などに汚染された「事故米」の転売問題について「正面から逃げることなく全力で取り組みたい」と述べ、急務の課題であるとの認識を示した。「防衛と同じく、国民の安心・安全を守るという政治家としてやらないといけない仕事」と語った。
 事故米では検査が不十分との指摘もある農林水産省の責任追及も課題だ。石破氏は事故米問題の農水省の対応について「農水省全体の意識改革が必要。本日付で農水省としての対策本部を立ち上げる指示をした。組織を変えなければダメか検証しないといけない」と発言した。
 自民党は二十四日、米価の下落防止に政府による買い上げを求めるなど、衆院選をにらんだ動きを強める。石破氏がどれだけ改革を進められるかは不透明だ。
 BNPパリバ証券・河野龍太郎チーフエコノミスト 新首相の発言や閣僚の顔ぶれを見ると、財政拡大路線に走るのではと懸念している。米国経済の減速は日本にも悪影響を与えるが、現状では財政出動をするほど深刻な景気後退に陥っていない。将来に負担を先送りする政策はできるだけ慎むべきだ。
 安易に財政支出を増やせば、日本政府に対する市場の信頼も揺らぐ。現在、長期金利は非常に低い状態にあるが、二〇一一年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するという財政再建目標を政府が掲げているのが理由だ。歳出拡大に走れば、日本国債の価格は下がり、金利は上昇。円売りにもつながる。
 井堀利宏・東大教授 内閣の顔ぶれを見ると「お友達」で固めた印象で、財政健全化が先送りされかねない危うさが漂う。景気対策を優先課題とする首相や財務相と、財政再建を唱える経済財政担当相では明らかに路線が異なり、方向性が見えない。経済政策も痛みを先送りするような短期的なものが目立つ。
 首相は特別会計の積立金など「埋蔵金」を活用する方針を示しているが、会計上の操作にすぎず新たな財源を生むわけではない。むしろ財政状況は悪化する。消費税率は当面上げないと言っているが、どこかで道筋をつけなければ永遠に機会を逸してしまう。内閣には国民に財政健全化の必要性を説明する責任がある。

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衆院選、比較第一党争う、与野党、選挙準備を加速、政界再編に発展も。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 与野党は二十四日の麻生内閣の発足を踏まえ、早期の衆院解散・総選挙に向けた準備を加速する。自民、民主両党による政権を賭けた戦いとなるが、単独過半数の獲得は容易ではなく、どちらが最多議席を得て「比較第一党」の座を得るかが焦点。総選挙後の政局の行方も不透明で、政界再編含みの展開になる可能性がある。(1面参照)

 「もう人事は終わったの?」。二十四日夕、国会内の民主党役員室。小沢一郎代表があいさつに訪れた麻生太郎首相に水を向けると、首相は「ほぼ終わった」と短く答えた。冒頭の会話は互いに敬語を使わない「ため口」で、部屋には緊張感も漂った。
 両党は衆院選の臨戦態勢に入っており、小沢氏は二十五日に福岡入りして地方行脚を本格化。衆院選向けのマニフェスト(政権公約)を月内にも取りまとめる。自民党も同日に選挙向けポスターを発表する。
 自民、民主両党では独自の情勢調査などを踏まえ「互いに単独過半数は厳しい状況」(民主党幹部)との見方が多い。民主党が単独過半数を得るには百三十議席近く増やす必要がある。自民党が単独過半数を得たとしても野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」は変わらず、厳しい国会運営が続く。
 両党が勝敗ラインに掲げるのは、比較第一党の座を確保できるかどうかだ。民主党の鳩山由紀夫幹事長は「少なくとも一議席でも自民党に勝つ」と強調し、自民党の古賀誠選挙対策委員長も「単独で比較第一党を取って(与党で)過半数を取るのが命題だ」と述べている。
 両党を除く各党と無所属議員が選挙前と同議席と仮定すれば、自民党が九十六議席以上減らさなければ比較第一党の座を確保する。ただ、その場合でも民主党は大幅に議席を増やす計算になり、民主党内には早くも「第一党でなくても躍進には違いない」と予防線を張る向きもある。
 民主党が比較第一党になり、自公両党で過半数割れすれば、民主党中心の連立政権ができる公算が大きい。一方、自公両党で過半数を維持して自公政権が続いても、政局が不安定さを増すのは避けられそうにない。民主党が「世論の支持は我が党にある」と主張するのは確実で、民意の判定は難しい。公明党が自民党に距離を置く可能性も否定できない。自民、民主両党による所属議員の「引き抜き合戦」が激化することも考えられる。
 与党内では総選挙後、民主党側から小沢氏と距離を置く勢力が分裂する「政界再編」への期待もある。一方で民主党には「ねじれ国会で立ち行かなくなり、一年以内に再び衆院解散か総辞職になる。離党する労力を考えればとどまった方が得策」との見方も多い。


政策、強まる迎合色、マニフェスト選挙の危機。2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 新首相が誕生し、衆院選も秒読みなのに政治から躍動感が伝わってこない。選挙をにらんで手腕より安定重視の世襲議員が目立つ内閣の顔ぶれはともかく、最大の理由は「政治決戦」の掛け声とは裏腹に与野党の争点がいっこうに見えないためではないか。
 麻生太郎首相は「民主党に政権は断じて担えない」と力説し、対する民主党の小沢一郎代表は「政権交代に政治生命をかける」と声をからす。しかし、どういう日本をつくるのかというビジョンがあいまいでは、有権者には選択するすべがない。
 政治の閉塞(へいそく)感の責任は、一義的には国民の将来不安を放置してきた自民党にある。消費税論議を棚上げした小泉政権が五年半続いた後、「二〇〇七年度中」とした社会保障や税制の抜本改革の目標は先送りされたままだ。
 麻生氏は総裁選で「日本経済は全治三年」と景気最優先で歳出削減を見直す姿勢を鮮明にしたものの、与党の総合経済対策を超える処方せんには触れずじまい。年金や医療制度改革の具体像は明かさず、持論だった基礎年金の税方式への移行もあっさり引っ込めた。
 民主党は首相が二代続けて政権を投げ出し、「消えた年金」や「食の安全」などの不祥事が相次いでも、政権待望論がそれほどには広がっていない現状を直視すべきだ。
 小沢氏は二大政党制に道をひらく衆院への小選挙区制度導入の旗振り役だったが、最近は「明確な対立軸を示して有権者に政権選択を迫る」との理念はかすみがちだ。
 衆院選を意識した基本政策を見て違和感があるのは「二十二兆円に上る政策財源」の裏付けへの不安に加え、高速道路無料化や農業の戸別所得補償などが果たして日本の最優先課題なのかという疑問である。
 政策実現のメドを数値や年限で明示するマニフェスト(政権公約)が定着したのは、〇三年秋の衆院選だった。ただ政策対決の機運は回を追うごとに後退し、今回はポピュリズム(大衆迎合)の色彩が濃くなっている。
 「ねじれ国会」のくびきを抱える与党は、内政や外交の重点政策を掲げて「直近の民意」のお墨付きを得ることが当面の最善策であるはずだ。野党は自民党の後継首相選びを「総裁選ごっこ」とやゆしたが、基本政策の対立軸さえおぼろげでは国民には「政権交代ごっこ」としか映らない。(編集委員 坂本英二)


金融・資本市場、景気対策に注目、優遇税制期待、具体策見極め。
2008/09/25, 日本経済新聞 朝刊

 金融・資本市場は麻生太郎政権が打ち出す景気対策に注目している。麻生首相に近い中川昭一氏が財務相兼金融担当相に就き「両氏が提唱する証券優遇税制などが実現しそう」と市場テコ入れに期待がある。一方で、ねじれ国会で政権運営は難しく「政策が実現しないと材料にならない」と冷めた見方もある。
 麻生首相は証券優遇税制や設備投資減税の拡充を提唱しており、株式市場では「政策総動員が必要な時期であり、積極財政論者の麻生氏は適任」(東京海上アセットマネジメント投信の平山賢一チーフファンドマネージャー)と期待する声がある。一方で「財源や効果に疑問がある」(フォルティス・アセットマネジメントの山本平社長)などと、当面は政権運営を見極めたいとする雰囲気も強い。
 外国為替市場には「財政のバラマキとなれば改革後退とみなされ、円安方向に振れる」(クレディ・スイス証券の小笠原悟エコノミスト)との指摘がある。ただ、市場参加者の関心は米金融危機に集中しており「日本の政局はほとんど材料にならない」という。
 債券市場にも財政悪化懸念が根強くある。一方、「麻生氏は赤字国債を発行しないと明言しており、具体策を見極めたい」(日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト)と慎重な見方もある。

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麻生内閣発足、暮らしの安心どう実現、「暫定色」に不安の声。
2008/09/25, 日本経済新聞 大阪朝刊 (社会面)

 秋の政治決戦を見越し与野党の対決ムードが高まる中、麻生太郎政権が二十四日発足した。三十四歳の小渕優子氏が戦後最年少で入閣するサプライズもあり、衆院選に向けた話題づくりの意図ものぞく。北朝鮮拉致事件の被害者家族は担当相が兼務となったことに戸惑いを隠さない。食の安全など喫緊の課題が山積するなか、「暫定色」がにじむ新政権の誕生に有権者からは「安心で安全な生活の実現に取り組めるのか」との不安の声が上がった。(1面参照)

 「防衛相のときにひたすら役所を守っていた印象がある石破茂さんが、今度は農林水産省を守らなければいいが……」
 月刊誌「食品と暮らしの安全」編集長の小若順一さん(58)は懸念する。「食の安全の問題を解決するには、役所の体質を根本的に変える必要がある。総選挙に意識が強く向かってしまい、腰を据えて取り組むことができるのか」と疑問を呈した。
 石破農相はこの日の記者会見で、事故米の不正転売事件について対策本部を立ち上げることを明らかにし、「省全体の意識改革が必要」と強調した。しかし小若さんは「本気で農水省改革をするなら外部の人を集めて省の責任を問わないと。役人を集めただけの対策本部では、省益保護が予見できる姿勢だ」と冷めた目を向けていた。
 主婦連合会(東京・千代田)はこの日、緊急集会を開き、出席した農水省などの担当者にメンバーらが「事故米の転売は消費者への裏切りだ」と詰め寄った。会長の山根香織さん(51)は麻生政権に対し「消費者庁の創設は必ず継承し、消費者目線への転換を求めたい」と注文をつけた。

●高齢者医療
 麻生首相は後期高齢者医療制度を見直す方針で公明党と合意している。医療ソーシャルワーカーの団体、東京都医療社会事業協会(東京・新宿)会長の武山ゆかりさん(59)は「結果を予測して政策を立てるという責任政党の責務を、前内閣は果たしたとはいえない。新内閣は医療機関や国民の声をしっかり聞いてほしい」と訴える。
 舛添要一厚労相は二十四日の記者会見で「(同制度の改革に)一年ぐらいの議論は必要だ」と説明した。武山さんは「拙速に見切り発車したのに見直しに一年もかかるとは、問題をうやむやにしようとしているのではないか」と批判。「選挙で票を得るための小手先の改革では意味がない」と話した。
 「後期高齢者医療制度は必要」との立場の社会保険労務士、池田直子さん(44)は「衆院選を意識して『目の前の負担をとりあえず軽くしよう』では問題の先送りにすぎない。五十年、百年先の目標を定めて、反対を受けてもやり抜く気概がほしい」と強調した。

●拉致問題
 中山恭子氏が務めていた拉致問題担当相は河村建夫官房長官が兼務することに。拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(70)は「官房長官はあらゆる問題への対応が求められ、拉致問題を最優先にはできないだろう」。
 中山氏が担当相を外れ、「これから誰に相談すればいいのか……」と不安を隠せない様子。近く衆院の解散・総選挙も予想されるだけに、「また拉致問題が停滞するかもしれない。取り巻く状況があまりにもくるくる変わるので、混乱している」と打ち明けた。
 拉致被害者の有本恵子さん(失跡当時23)の母、嘉代子さん(82)は「麻生首相は北朝鮮にはっきりとモノを言ってもらえそう」と期待。「誰が担当でも最後に方針を決めるのは首相。一日も早く麻生首相に面会したい」と話していた。

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麻生首相:基礎的財政収支黒字化の前提変化無視できず−就任会見

  9月24日(ブルームバーグ):麻生太郎首相は24日夕、首相官邸で就任会見を行い、2011年度に国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとの政府の財政健全化目標について「少なくとも経済成長率3%が前提だったが、いまはマイナス3%になるかもしれない状況だ。前提条件が大幅に違ってきている現実を無視して達成が確実にできるかと言われると、その状況は著しく変わってきている」との認識を示した。
  目標の達成時期を見直す可能性について麻生首相は、「今すぐ修正の閣議決定をするつもりはない」と述べるにとどめた。麻生氏は福田前政権の幹事長に就任した直後の8月5日の報道各社によるインタビューで、黒字化の時期を11 年度から2、3年先送りすることも「選択肢としてあり得る」と語っていた。

衆院解散時期、2008年度補正審議への野党対応次第
  衆議院の解散・総選挙の時期に関する質問に対しては、「景気は不景気だと思っており、それに対応するためにどうするかを考えなければいけない。補正予算の審議に応じていただけるかいただけないか、そういうことも勘案して考えていきたい」と述べ、08年度補正予算案の審議に対する野党側の出方を見極めた上で判断する考えを明らかにした。
  中川昭一氏に財務相と金融担当相を兼務させた理由について麻生首相は、「世界中で金融が危機と言われている状況にある。兼務されるべきだとわたしは金融危機が起きたときから思っている」と指摘した。財務省と金融庁を統合する可能性に関しては、「役所を一つにするかしないかは現実問題としてどう仕事ができるかを見た上でないとなんともいえない」と語った。
  基礎年金の国庫負担割合を2010年度から現行の3分の1から2分の1に引き上げる政府方針に関しては「約束なので実施する」と明言した。  更新日時 : 2008/09/24 21:05 JST


中川次期財務相:赤字国債の発行に否定的−財政黒字化目標に意欲

  9月24日(ブルームバーグ):中川昭一次期財務相兼金融担当相は24日夜、官邸で行われた麻生太郎新内閣の閣僚指名後の記者会見で、経済活性化に向けた財政出動の必要性について「必ずしも財政出動と赤字国債発行はイコールではない。できれば赤字国債は発行しない方がよい。そういう中で知恵を絞りたい」と述べ、赤字国債発行に否定的な見解を示した。
  また、政府が掲げている2011年度までの国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標については「決して捨てたわけではない。何としても実現したい。そのためにも景気を良くしたい。それによって 2011年度という目標が達成できると考えている」と述べた。
  中川氏はこれまで経済活性化のための財政支出を封印すべきでないなどとし、定額減税の復活や企業減税の実施などを柱とした経済対策を提言。プライマリーバランス黒字化の実現も困難としていたが、財務相への指名を機に、ひとまずは慎重な物言いに終始した。
  また、中川氏は経済成長を重視する上げ潮派と財政再建派の議論について路線闘争をする状況ではないとしていたが、この日の会見では「財政再建は国民のコンセンサス。そのためには経済を回復し、国民の暮らしや仕事を元気にすることで財政再建を成し遂げなければならない」と述べ、財政再建と経済成長は矛盾するものではないとの認識を示した。
  さらに、中川氏は麻生首相から@今年度補正予算の早期成立A世界金融不安に対する適切な対応B持続的な社会保障制度の確立に向けた安定的な財源確保の道筋の明確化C来年度予算編成における歳出の無駄の排除−の4項目について指示を受けたことも明らかにした。  更新日時 : 2008/09/24 21:35 JST
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