2009年01月24日

特集―オバマ政権、陣容と政策、重厚布陣変革に挑む、演説表現に見る政策課題。

特集―オバマ政権、陣容と政策、重厚布陣変革に挑む、演説表現に見る政策課題。
2009/01/24, 日本経済新聞 朝刊, 8ページ

 米国初の黒人大統領に就任したバラク・オバマ氏(47)は、対テロ戦争の長期化で超大国としての威信が低下し、金融危機を受けて深刻な景気後退局面にある逆風下での船出となった。オバマ大統領は二十日の就任演説で米国の置かれている厳しい状況を率直に指摘、国民とともに立ち向かう「責任の時代」を強調した。就任演説から政策課題を読み解いた。


経済・金融  市場とどうバランス

 「我々は危機のまっただなかにいる。経済はひどく脆弱(ぜいじゃく)になった」
 「新しい雇用を創造するだけでなく、成長の新しい基盤を築くために我々は行動する」
 就任演説で危機を訴えたオバマ大統領にとり、景気てこ入れと金融安定化は喫緊の課題。新政権側は公共事業を柱に総額八千二百五十億ドル(約七十三兆円)の景気対策を打ち出したほか、前政権が残した金融安定化法の運用を大幅に見直す方針も表明した。
 景気対策のうち五千五百億ドルが戦略投資。道路などインフラ整備に加えエネルギー、科学技術、教育など八分野に重点的に投じ三百万―四百万人の雇用創出・維持を目指す。
 一方、新財務長官に指名されたガイトナー氏は二十一日の上院公聴会で現行の金融安定化法を「抜本的に見直す」と発言。金融機関への資本注入にほぼ限られていた公的資金の使途を、不良資産の抜本処理や貸し渋り対策にも回す。
 危機の根源である住宅市場を救うため、差し押さえ防止にも取り組む考えだ。
 新政権の経済政策の基本線は政府による所得の再配分と規制強化にある。オバマ大統領は自由市場の利点自体は否定していないが、金融システムを適切に管理するため新しい規制の枠組みを打ち出す構えだ。
 国際競争面から批判の根強い米自動車大手の救済に今後どれだけ関与するかも含め、政府と市場の役割バランスが注目点だ。
 足元で関心が高まっているのが通商政策。ガイトナー氏は「オバマ大統領は中国が自国通貨を操作していると信じている」と答弁。新政権は中国への人民元切り上げ要求など強硬手段に訴える可能性が出てきた。中国同様に対米貿易黒字を抱える日本も無関心ではいられない。


環境エネルギー  新しい成長の要に育成

 「我々のエネルギーの消費の仕方は敵を強化し、地球を脅かしていることが、日を追うごとに鮮明になっている」
 「太陽、風、大地を使い自動車を動かし、工場を稼働させる」
 オバマ大統領は就任演説で、風力や太陽光など新エネルギー開発の重要性を強調。石油依存型社会からの脱却をはかると同時に、競争力を失いつつある旧来型産業に代わる新しい成長の要として環境産業育成を急ぐ考えを示した。
 二年間で八千億ドル規模の景気対策では新エネルギーの普及促進や公共施設の省エネ化に五百億ドル超を計上する見通し。温暖化対策という中長期的な課題と目先の景気浮揚を目指す「グリーン・ニューディール」の成否が新政権の立ち上がりの大きなカギを握る。
 ブッシュ前政権は正副大統領とも石油業界との関係が密接だった。エネルギーの安定供給という点では、国内油田の開発や原子力発電所の増設を重視。国際舞台では、先進国に温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書から離脱した。「環境への過度の配慮は成長を阻害する」と“単独行動主義”を貫き、「ポスト京都」の目標設定に向けた国際交渉の停滞を招いた。
 オバマ政権の環境・エネルギーチームは、再生可能エネルギーの推進や地球温暖化対策の枠組みづくりへの積極的な参加へと大きくカジを切ることを象徴する布陣だ。
 エネルギー長官にはノーベル物理学賞受賞者で「脱・石油」の推進論者であるスティーブン・チュー氏。十三日の議会公聴会では「現在の(生活の)やりかたを続ければ、子供や孫の世代の環境に破壊的な変化をもたらすリスクがある」と指摘。新エネルギー開発や温暖化防止を重視した政策を採る姿勢を明確にした。
 環境保護局(EPA)長官につくリサ・ジャクソン氏はかつてEPAに十六年間勤務していた経歴があり、環境行政のベテラン。ゴア元副大統領にも近いとされる。新政権の環境・エネルギー分野では総じて環境保護に熱心な「リベラル派」が目立つのが特徴だ。


外交・安保  武力は自制、正論を主張

 「米国は幅広い暴力と憎しみのネットワークと戦争中だ」
 「旧友やかつての敵と手を携え、たゆまぬ努力で核の脅威を削減」
 米国をテロから守る――。米大統領の最大の外交・安保政策はオバマ時代になっても変わらない。就任演説でオバマ氏は「憎しみのネットワーク」という前任者の定義を継承した。だが、それに対処する「力の行使」に関しては慎重姿勢を見せた。「先人らがファシズムや共産主義にミサイルや戦車だけでなく、強固な同盟と永続する信念で立ち向かったのを思い起こしてほしい」。同盟重視、協調外交を打ち出した。
 外交課題として具体名を上げたのは二カ国。イラクからの撤退については「責任を持って」、アフガニスタンの沈静化は「苦労しながら」実施すると述べ、現在の状況を文言に反映させた。
 選挙戦ではイラン、北朝鮮、ベネズエラなどの反米指導者とも対話の用意があると語っていた。就任演説では「その握りしめた拳を開けば、我々は手をさしのべる」と呼びかけた。
 二十二日、ホワイトハウスから車で五分の国務省を訪れたオバマ大統領は「米国の指導力再生には外交が重要だ。軍事力や富の大きさだけでなく、米国の普遍の価値が米国の力だと認識しなければならない」と職員に訓示した。武力の行使は自制し、正論を主張することこそ米国のパワーの源泉だと説く。


多様な人材集結、政敵も取り込む。

 オバマ政権は大物議員、有力知事、ノーベル賞受賞者などをそろえた「オールスター・チーム」となっている。ブッシュ大統領がテキサス時代からの知人や支援者を重用したスタイルとは異なり、むしろ「ベスト・アンド・ブライテスト(最良の、最も聡明な人々)」を起用したケネディ大統領、予備選を争った政敵を取り込み「チーム・オブ・ライバルズ」を結成したリンカーン大統領に似ている。
 同じ民主党政権のクリントン政権の経験者が多いことから「第三次クリントン政権」と称する人もいる。選挙戦で活躍したシカゴ人脈は意外と起用されなかった。論功行賞より、大物ライバルを政権内に取り込むことで閣外に不満分子を残さないことを狙ったようだ。
 閣僚の平均年齢は五十五・七歳で、二〇〇一年に発足したブッシュ政権(五十七・九歳)に比べて約二歳若返った。女性は三人、少数派は六人。多様化は進んだ。
 実力者を集めた重厚な布陣であるため、一方で権力争いも懸念される。経済分野では調整型といわれるガイトナー財務長官、クリントン政権でガイトナー氏の上司だったサマーズ国家経済会議(NEC)委員長、大ベテランのボルカー経済再生諮問会議議長が三本柱。担当のすみ分けは明確になっていない。外交面でもクリントン国務長官と民主党きっての外交通、バイデン副大統領のつばぜり合いも予想される。
 見逃せないのは、こうした重鎮らを束ねるため、ホワイトハウス(大統領府)を強力な布陣で固めたことだ。下院議員を務めたエマニュエル首席補佐官は議会対策も期待されている。


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演説づくり、オバマ氏指示、「この瞬間を表現してくれ」。
2009/01/24, 日本経済新聞 朝刊, 8ページ

 「この瞬間を表現するものにしてくれ(Describe the moment)」――。オバマ大統領は当選直後の昨年十一月上旬、就任演説づくりに向け、側近のデビッド・アクセルロッド上級顧問らにこんな注文を出した。
 真冬に二時間近く長広舌をふるって肺炎になり、就任一カ月で亡くなった大統領がいたことを考慮し、「長さは十五分間から二十分間で」と付け加えたが、中身ではあまり細かいことは言わなかったそうだ。
 二〇〇七年二月にオバマ氏が大統領選に名乗りを上げてからのすべての演説を書いてきた二十七歳のスピーチライター、ジョナサン・ファブロー氏は直ちに意図を理解した。
 「Describe the moment」という言い回しはどこから来たのか。大恐慌期に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領を描いた「Defining moment」という本をオバマ氏が熱心に読んでいたことを選対幹部はよく知っていた。
 米経済が危機的状況にあることを率直に認め、国民が団結して立ち向かうよう呼びかける。基本線はすぐに決まった。
 ただ、ファブロー氏もオバマ氏の性急さには驚いた。
 「初稿は十一月中にできるか」
 「月末は感謝祭休暇を取る予定なのですが」
 締め切りを一カ月ほど延ばしてもらった分、ファブロー氏も念入りに作業を進めた。過去の演説を読むのは当たり前。音声や映像が残っている演説は実際に見聞きし、間合いの入れ方も研究した。本番では計算通りにオバマ氏は十八分間で演説を読み終えた。


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オバマ演説、この言葉、キーワード解説。
2009/01/24, 日本経済新聞 朝刊, 8ページ


米国の衰退は不可避という恐れ

 1929年の大恐慌克服に立ち向かったルーズベルト大統領の「恐れるべき唯一のものは恐れそのものだ」にも似て、先行きの不安や危機にひるむことなく、楽観的に前進することで困難を乗りこえようと国民を鼓舞した。オバマ氏は「必ず解決できる」と言いながらも「簡単に短期間で解決できるものではない」と問題の大きさを認める。就任後もラジオの「炉辺談話」で語り続けたルーズベルトのように、オバマ氏もインターネットを活用して国民と双方向の対話を続ける。

我々は恐れより希望を、争いや仲たがいより目的を共有することを選んだ

 リンカーン大統領の「誰に対しても悪意を抱かず、私たちが始めた仕事を完成させ、国家の傷をいやすことに全力を傾けようではないか」との一節にも通じる。
 南北戦争で国家分断の危機に直面したリンカーンは、政敵も取り込んだ挙国一致型の政権を組んで乗り切った。オバマ氏は歴代大統領の演説で最も偉大な演説はリンカーンの演説だと語っており、ブッシュ政権の8年間で進んだ国内の亀裂を修復し、再び融和と結束を進める使命を担う自らの立場を、リンカーンに重ね合わせている。

新たな責任の時代

 演説の直前にオバマ大統領周辺が「重要なキーワード」と予告していた言葉。ケネディ大統領の「あなたが国家のために何ができるか」に通じる表現だ。2つの対テロ戦争、金融危機に端を発した経済の悪化など、ブッシュ前政権で閉塞(へいそく)感を強めた米国民には、オバマ大統領の登場ですべてが変わるとの幻想にも似た期待もある。オバマ氏の演説は政府や大統領個人への過度な期待を戒め、一人ひとりの国民に「米国と世界に対して義務を負う」と呼びかけ、米国再生に向けた「信念と決意」をも問うた。
 オバマ氏は米国の衰退は「国家を新しい時代に準備してこなかった集団的な失敗」と、国民全体の責任も指摘した。ブッシュ氏の「失政」だけを理由にできず、期待を一身に背負うオバマ氏の重圧をも示している。

希望と美徳以外は何一つ
生き残ることができない真冬の日に、
共通の危機にひんした都市と地方は
ともにそれに立ち向かった

 米国初代大統領のジョージ・ワシントンが独立戦争の際に兵士を鼓舞するため使った言葉。もとは思想家で、英国からの独立を主張したトマス・ペインが著した「アメリカン・クライシス」の一節。
 これ以外にもオバマ氏は独立憲章を書き上げたときの様子や、西部開拓など建国当時の理念や理想を演説で繰り返した。米国史上、初の黒人大統領となったオバマ氏には、経済や外交でも「自己中心主義」に傾きがちだった米国の理念を建国当時に戻って再確認し、米国を再生することは「第二の建国」に匹敵する大事業だとの思いがあるようにみられる。

■44人の米国人が大統領の宣誓をした
  オバマ氏は44代大統領だが、正確には43人しか宣誓していない。22代クリーブランド大統領は再選に失敗した後、再挑戦し24代に返り咲いた。

■我ら合衆国の人民
  原文で「We the People」とここだけ大文字になっているのは、1788年発効の米合衆国憲法前文を引用しているため。

■共同の防衛
  合衆国憲法前文に使われている表現。「国防」全般を指している。

■建国の父たち
  1776年に米独立宣言に署名したワシントン初代大統領、アダムズ2代大統領、ジェファーソン3代大統領ら。

■私の父が生まれた小さな村
  オバマ氏の父はケニア西部アレゴの出身。ビクトリア湖畔の村である。

■アーリントン(国立墓地)
  首都ワシントンからポトマック川をわたったバージニア州にある国立の軍人墓地。南北戦争の戦没者のためにつくられ、ケネディ大統領も眠る。

■60年前ならレストランで食事をすることもできなかったかもしれない父
  1964年の公民権法により学校、公共の場、職場での人種に基づく隔離(人種差別)が禁じられた。それまでは「白人のみ」と看板を掲げるレストランもあった。


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特集―オバマ米大統領就任演説全文(1月20日)
2009/01/24, 日本経済新聞 朝刊, 9ページ

 My fellow citizens:
 I stand here today humbled by the task before us, grateful for the trust you have bestowed, mindful of the sacrifices 
borne by our ancestors. I thank President Bush for his service to our nation, as well as the generosity and cooperation he has shown throughout this transition.
 Forty−four Americans have now taken the presidential oath. The words have been spoken during rising tides of prosperity and the still waters of peace. Yet, every so often the oath is taken amidst gathering clouds and raging storms. At these moments, America has carried on not simply because of the skill or vision of those in high office, but because We the People have remained faithful to the ideals of our forbearers, and true to our founding documents.
 So it has been. So it must be with this generation of 
Americans.
 That we are in the midst of crisis is now well understood. Our nation is at war, against a far−reaching network of 
violence and hatred. Our economy is badly weakened, a 
consequence of greed and irresponsibility on the part of some, but also our collective failure to make hard choices and 
prepare the nation for a new age. Homes have been lost; jobs shed; businesses shuttered. Our health care is too costly; our schools fail too many; and each day brings further evidence that the ways we use energy strengthen our adversaries and threaten our planet.
 These are the indicators of crisis, subject to data and 
statistics. Less measurable but no less profound is a sapping of confidence across our land−a nagging fear that America’s 
decline is inevitable, and that the next generation must lower its sights.
 Today I say to you that the challenges we face are real. They are serious and they are many. They will not be met easily or in a short span of time. But know this, America−they will be met.
 On this day, we gather because we have chosen hope over fear, unity of purpose over conflict and discord.
 On this day, we come to proclaim an end to the petty 
grievances and false promises, the recriminations and worn out dogmas, that for far too long have strangled our politics.

 市民の皆さん。私は今日、我々が直面する任務を謙虚に受け止め、皆さんにいただいた信頼に感謝し、先祖が払った犠牲を忘れずに、ここに立っている。ブッシュ大統領の国への奉仕と、政権移行期に示してくれた寛容さと協力に感謝する。
 これで44人の米国人が大統領の宣誓をした〓。宣誓の言葉は、潮が満ちる繁栄のなかで発せられたこともあれば、水面が穏やかな平和時に読まれたこともある。しかし、宣誓は時折、暗雲が垂れこめ、荒れ狂う嵐のさなかで行われる。このような時にも米国が前進し続けられたのは、単に指導者たちの技量や洞察力のためだけでなく「我ら合衆国の人民〓」が先祖の理想に忠実で、建国の文書に誠実であったためだ。
 ずっとそうあり続けてきたし、現世代の米国人もそうでなければならない。
 我々が危機のまっただなかにいることは、いまや誰もが分かっている。米国は幅広い暴力と憎しみのネットワークと戦争中だ。経済はひどく脆弱(ぜいじゃく)になった。それは一部の人々の強欲と無責任の代償でもあるが、同時に、難しい選択をせず、国家を新しい時代に準備してこなかった集団的な失敗でもある。家は失われ、仕事は奪われ、企業は破綻した。健康保険はコストがかかりすぎ、学校はあまりにも多くの人の期待を裏切る。我々のエネルギーの消費の仕方は敵を強化し、地球を脅かしていることが、日を追うごとに鮮明になっている。
 これらはデータや数字で表れる危機の指標だ。同様に甚大な問題でありながら、より把握しにくいのは、米全土で徐々に広まっている自信喪失だ。それは米国の衰退は不可避という恐れ〓、次の世代は目標を下げなければならないという不安だ。
 今日、我々が直面している試練は現実のものだ。それらは深刻で多岐にわたる。簡単に短期間で解決できるものではない。しかしアメリカよ、これらは必ず解決できる。
 今日この日、我々は恐れより希望を、争いや仲たがいより目的を共有することを選んだ〓結果、こうして集まった。今日この日、我々の政治を長い間、窒息させてきたつまらない不平や間違った約束、非難合戦、使い古された教義などの終わりを宣言するために集まった。

 We remain a young nation, but in the words of Scripture, the time has come to set aside childish things. The time has come to reaffirm our enduring spirit; to choose our better 
history; to carry forward that precious gift, that noble idea, passed on from generation to generation: the God−given 
promise that all are equal, all are free, and all deserve a 
chance to pursue their full measure of happiness.
 In reaffirming the greatness of our nation, we understand that greatness is never a given. It must be earned. Our journey has never been one of short−cuts or settling for less. It has not been the path for the faint−hearted−for those who prefer leisure over work, or seek only the pleasures of riches and fame. Rather, it has been the risk−takers, the doers, the 
makers of things−some celebrated but more often men and women obscure in their labor, who have carried us up the long, rugged path towards prosperity and freedom.
 For us, they packed up their few worldly possessions and traveled across oceans in search of a new life.
 For us, they toiled in sweatshops and settled the West; 
endured the lash of the whip and plowed the hard earth.
 For us, they fought and died, in places like Concord and 
Gettysburg; Normandy and Khe Sanh.
 Time and again these men and women struggled and 
sacrificed and worked till their hands were raw so that we might live a better life. They saw America as bigger than the sum of our individual ambitions; greater than all the 
differences of birth or wealth or faction.
 This is the journey we continue today. We remain the most prosperous, powerful nation on Earth. Our workers are no less productive than when this crisis began. Our minds are no less inventive, our goods and services no less needed than they were last week or last month or last year. Our capacity 
remains undiminished. But our time of standing pat, of 
protecting narrow interests and putting off unpleasant 
decisions−that time has surely passed. Starting today, we must pick ourselves up, dust ourselves off, and begin again the work of remaking America.
 For everywhere we look, there is work to be done. The state of the economy calls for action, bold and swift, and we will act−not only to create new jobs, but to lay a new foundation for growth. We will build the roads and bridges, the electric grids and digital lines that feed our commerce and bind us together. We will restore science to its rightful place, and 
wield technology’s wonders to raise health care’s quality and lower its cost. We will harness the sun and the winds and the soil to fuel our cars and run our factories. And we will 
transform our schools and colleges and universities to meet the demands of a new age. All this we can do. And all this we will do.

 我々は若い国家であり続けるが、聖書の言葉を借りれば、子供じみたことはやめる時が来た。不朽の精神を再確認し、歴史の良い部分を振り返り「すべての人が対等で、自由で、最大限の幸福を追求する機会を持つ」という代々受け継がれてきた貴重な贈り物、高貴な理念、神の約束を前進させる時が来た。
 我々はこの国の偉大さを再確認するとき、偉大さが決して当然のことではないと理解している。それは働いて得たものでなくてはならない。我々の旅路は近道や妥協であったことはない。憶病者や、勤労より娯楽を好み、富と名声の喜びだけを求める者の旅路だったこともない。むしろリスクをとり、行動し、物を作り出す人々が繁栄と自由への長いでこぼこ道を導いてきてくれたのだ。その中には高名な人もいるが、多くは無名の働く男女だ。
 彼らは私たちのためにわずかな所持品をかばんにしまい、海洋を旅し、新しい生活を探してくれた。
 彼らは私たちのために工場で汗を流して働き、西部を開拓し、むち打ちに耐え、硬い大地を耕してくれた。
 彼らは私たちのために(独立戦争の)コンコード、(南北戦争の)ゲティスバーグ、(第二次大戦の)ノルマンディー、(ベトナム戦争の)ケサンのようなところで戦い、命を落とした。
 これらの男女は私たちがよりよい暮らしを送れるよう何度も何度も苦闘し、犠牲を払い、手が腫れるまで働いてくれた。彼らの目に映る米国は、一人ひとりの大望の集積もさらに大きいものだった。生まれや富や党派の違いを超越した国だった。
 これが今日も我々が続けている旅だ。我々は依然として地球上で最も繁栄し、強い国家だ。今回の危機が始まってから米国の労働者の生産性が落ちたわけではない。創造性が低下したわけではない。我々の商品やサービスへの需要が先週、先月、昨年より減ったわけでもない。我々の能力は衰えていない。しかし、現状維持、狭い権益の保護、不快な決断を先送りする時代は間違いなく過ぎ去った。今日から我々は立ち上がり、ほこりを振り払い、米国を再生する作業をもう一度始めなくてはならない。
 なぜなら、どこを見てもなすべき仕事がある。経済の現状は大胆で迅速な行動を求めている。新しい雇用を創造するだけでなく、成長の新しい基盤を築くために我々は行動する。
 我々は商業の糧となり、我々を結びつける道路や橋、送電網や通信網を造る。科学を本来あるべき地位に引き上げ、医療の質の向上とコストを抑えるために素晴らしい技術を駆使する。太陽、風、大地を使い自動車を動かし、工場を稼働させる。新しい世代の需要に合うように学校や大学を変革していく。これらはすべて実現可能だ。そして我々はこれらをすべてやる。

 Now, there are some who question the scale of our ambitions−who suggest that our system cannot tolerate too many big plans. Their memories are short. For they have forgotten what this country has already done; what free men and women can achieve when imagination is joined to common purpose, and necessity to courage. 
 What the cynics fail to understand is that the ground has shifted beneath them−that the stale political arguments that have consumed us for so long no longer apply. The question we ask today is not whether our government is too big or too small, but whether it works−whether it helps families find jobs at a decent wage, care they can afford, a retirement that is dignified.
 Where the answer is yes, we intend to move forward. Where the answer is no, programs will end. And those of us who manage the public’s dollars will be held to account−to spend wisely, reform bad habits, and do our business in the light of day−because only then can we restore the vital trust between a people and their government.
 Nor is the question before us whether the market is a force for good or ill. Its power to generate wealth and expand 
freedom is unmatched, but this crisis has reminded us that without a watchful eye, the market can spin out of control−
and that a nation cannot prosper long when it favors only the prosperous. The success of our economy has always depended not just on the size of our Gross Domestic Product, but on the reach of our prosperity; on our ability to extend opportunity to every willing heart −− not out of charity, but because it is the surest route to our common good.
 As for our common defense, we reject as false the choice between our safety and our ideals. Our Founding Fathers, faced with perils we can scarcely imagine, drafted a charter to 
assure the rule of law and the rights of man, a charter 
expanded by the blood of generations. Those ideals still light the world, and we will not give them up for expedience’s sake. And so to all other peoples and governments who are 
watching today, from the grandest capitals to the small village where my father was born:know that America is a friend of each nation and every man, woman, and child who seeks a future of peace and dignity, and that we are ready to lead once more.
 Recall that earlier generations faced down fascism and 
communism not just with missiles and tanks, but with sturdy alliances and enduring convictions.
 They understood that our power alone cannot protect us, nor does it entitle us to do as we please. Instead, they knew that our power grows through its prudent use;our security 
emanates from the justness of our cause, the force of our 
example, the tempering qualities of humility and restraint.
 We are the keepers of this legacy. Guided by these principles once more, we can meet those new threats that demand even greater effort−even greater cooperation and understanding 
between nations. We will begin to responsibly leave Iraq to its people, and forge a hard−earned peace in Afghanistan. With old friends and former foes, we will work tirelessly to lessen the nuclear threat, and roll back the specter of a warming planet.

 さて、我々の志の大きさについて疑問を持つ人々がいる。彼らは我々のシステムがあまりに多くの大計画に耐えられないと主張する。だが彼らは忘れっぽい。なぜなら彼らはこの国がなし遂げたことを忘れているからだ。想像力が共通の目的と結びつき、必要性が勇気と交わったとき、自由な男女が何を達成できるかを忘れている。
 皮肉屋は足元で地殻変動が起きていることを理解していない。時間を浪費しすぎたカビくさい政治論争はもはや通用しないのだ。我々が今日、問うているのは、政府が大きすぎるか、小さすぎるかではなく、機能しているか否かということだ。まともな収入を得る仕事、手が届く保険、尊厳ある老後の生活。これらを各家庭が手に入れられるように、政府が手をさしのべているかだ。
 答えがイエスな部分については、我々は前進させる。答えがノーな部分については、その事業を中止する。公金を管理するすべての者は説明責任を負う。使うべきところには賢く使い、悪い習性を改め、誰からも見えるように仕事をしてこそ、初めて国民と政府の間の信頼を取り戻せるのだ。
 市場が善か悪かという問題でもない。市場ほど富を生み、自由を広げる力を持つものはない。しかし今回の危機は、市場に対する監視の目がなければ、市場が制御不能に陥ることを思い出させた。国家は成功した者だけを引き立てていては成功できない。我々の経済の成功は、単に国内総生産(GDP)の規模だけでなく、繁栄の広がり、意欲あるすべての人に機会を提供する能力にかかってきた。そうするのは、慈悲としてではなく、共通の利益への最も確実な道だからだ。
 共同の防衛〓について言えば、安全と理想をてんびんにかける誤った選択を拒絶する。建国の父たち〓は想像を絶する危険に直面しながらも、法による支配や人権を確約する憲章を書き上げた。憲章はその後、何世代もが血を流したことにより拡充されてきた。その理想は今でも世界を照らし、我々は時々の都合で放棄したりしない。だから、今日(就任式を)見ているすべての(外国の)人々と政府に言いたい。そこが巨大な首都であれ、私の父が生まれた小さな村〓であっても。米国は平和と尊厳の未来を志すあらゆる国とあらゆる男性、女性、子供の友人である。そして我々は再び先頭に立つ用意ができている。
 先人らがファシズムや共産主義にミサイルや戦車だけでなく、強固な同盟と永続する信念で立ち向かったのを思い起こしてほしい。彼らは力のみでは自分自身を守れないこと、力があるからといって好き勝手に振る舞う資格がないことを理解していた。その代わり彼らは深慮をもって力を行使すれば、その力が増すことを知っていた。我々の安全は、大義の公正さ、模範の持つ力、謙虚さと自制がもたらす静寂から生じるものだということも知っていた。
 我々はこの遺産の守護者だ。この原則に再び導かれることで、我々はより困難な脅威、今まで以上に国家間の協力と理解が求められる新たな脅威に立ち向かうことができる。我々は責任を持ってイラクを同国民に返し、苦労しながらアフガニスタンに平和をもたらす。旧友やかつての敵と手を携え、たゆまぬ努力で核の脅威を削減し、地球温暖化の恐れを逆戻りさせる。

 We will not apologize for our way of life, nor will we 
waver in its defense, and for those who seek to advance their aims by inducing terror and slaughtering innocents, we say to you now that our spirit is stronger and cannot be broken;you cannot outlast us, and we will defeat you.
 For we know that our patchwork heritage is a strength, not a weakness. We are a nation of Christians and Muslims, Jews and Hindus−and non−believers. We are shaped by every 
language and culture, drawn from every end of this Earth;and because we have tasted the bitter swill of civil war and 
segregation, and emerged from that dark chapter stronger and more united, we cannot help but believe that the old hatreds shall someday pass;that the lines of tribe shall soon dissolve;
that as the world grows smaller, our common humanity shall reveal itself;and that America must play its role in ushering in a new era of peace. 
 To the Muslim world, we seek a new way forward, based on mutual interest and mutual respect. To those leaders around the globe who seek to sow conflict, or blame their society’s ills on the West−know that your people will judge you on what you can build, not what you destroy. To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history;but that we will extend a hand if you are willing to unclench your fist.
 To the people of poor nations, we pledge to work alongside you to make your farms flourish and let clean waters flow;to nourish starved bodies and feed hungry minds. And to those nations like ours that enjoy relative plenty, we say we can no longer afford indifference to suffering outside our borders;nor can we consume the world’s resources without regard to 
effect. For the world has changed, and we must change with it.
 As we consider the road that unfolds before us, we 
remember with humble gratitude those brave Americans who, at this very hour, patrol far−off deserts and distant mountains. They have something to tell us today, just as the fallen 
heroes who lie in Arlington whisper through the ages. We honor them not only because they are guardians of our liberty, but because they embody the spirit of service;a willingness to find meaning in something greater than themselves. And yet, at this moment−a moment that will define a generation−it is precisely this spirit that must inhabit us all.
 For as much as government can do and must do, it is 
ultimately the faith and determination of the American people upon which this nation relies. It is the kindness to take in a stranger when the levees break, the selflessness of workers who would rather cut their hours than see a friend lose their job which sees us through our darkest hours. It is the 
firefighter’s courage to storm a stairway filled with smoke, but also a parent’s willingness to nurture a child, that finally decides our fate.

 我々は自分たちの生き方について謝らないし、それを守ることを躊躇(ちゅうちょ)しない。自らの目的を達成するために、テロを使い、無実の人たちを殺害する者にいま告げる。我々の精神はあなた方より強く、決して砕けない。あなた方は我々より長続きすることは不可能であり、我々は必ずあなた方を打ち負かす。
 米国の先祖伝来の多様性は弱みではなく、強みだ。我々の国にはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、無宗教の人がいる。地球上のあらゆる場所から集まった言語と文化によって形作られた。米国は内戦や人種差別の苦汁を味わい、その暗い歴史から、より強く、より団結し再浮上した。だからこそ、我々はどうしても信じたい。古い憎しみがいつの日か過ぎ去り、部族の線引きがやがて消えることを。世界が狭くなるにつれ、共通の人類愛が浮き彫りになることを。そして米国が新しい平和の時代をもたらすために、役割を果たさなければならないことを。
 イスラム世界に言いたい。我々は互いの利益と互いへの尊敬に基づいた新しい道を求める。対立を助長したり、自国社会の問題を西洋に責任転嫁したりする世界の指導者に言いたい。あなたの国の国民は、あなたが何を壊すかによってではなく、何を築くかによってあなたを判断する。汚職とウソ、口封じによって権力にすがりつく指導者よ、あなたは歴史の間違った側にいる。しかし、その握りしめた拳を開けば、我々は手をさしのべる。
 貧しい途上国の人々に言いたい。畑が豊かになり、きれいな水が流れるようになるようあなたがたとともに取り組んでいく。飢えた体を養い、向上心のある脳を満たしていく。米国のような豊かな国は、もはや国境の外の苦しみに無関心ではいられない。何の考慮もなしに資源を無駄遣いすることも、もうできない。世界が変わったため、我々もそれに合わせて変わらなければならない。
 我々の前に開かれた道を考えるとき、私たちはこの瞬間にもはるか遠くの砂漠や山々を警備している勇敢な米国人たちを謙虚な感謝とともに思い出す。アーリントン(国立墓地)〓に横たわる亡くなった英雄たちが時代を超えてささやくように、彼らも我々に何かを語りかけている。彼らは私たちの自由を守っているだけでなく、奉仕の精神や、自分自身より偉大な何かに意味を見いだそうとする意志を体現しており、我々は彼らを誇りに思う。そして、いまの世代への評価が決まるこの局面で、この(奉仕の)精神こそが我々みんなが持たなくてはいけないものだ。
 なぜなら、政府ができること、やらなければならないことはあるが、この国が最後に頼りとするのは米国民の信念と決意だからだ。堤防が崩れた時に見知らぬ人を受け入れる優しさ、友人が職を失うくらいなら自分の労働時間を短縮する無私の心が、暗黒の時に我々を支えてくれる。煙に満ちた階段を駆け上る消防士の勇気、そして子供を育てる親たちの意欲が最終的に我々の運命を決める。

 Our challenges may be new. The instruments with which we meet them may be new. But those values upon which our 
success depends−honesty and hard work, courage and fair play, tolerance and curiosity, loyalty and patriotism−these things are old. These things are true. They have been the quiet force of progress throughout our history. What is demanded then is a return to these truths. What is required of us now is a new era of responsibility−a recognition, on the part of every 
American, that we have duties to ourselves, our nation, and the world, duties that we do not grudgingly accept but rather seize gladly, firm in the knowledge that there is nothing so satisfying to the spirit, so defining of our character, than 
giving our all to a difficult task.
 This is the price and the promise of citizenship.
 This is the source of our confidence−the knowledge that God calls on us to shape an uncertain destiny.
 This is the meaning of our liberty and our creed−why men and women and children of every race and every faith can join in celebration across this magnificent mall, and why a man whose father less than sixty years ago might not have been served at a local restaurant can now stand before you to take a most sacred oath. 
 So let us mark this day with remembrance, of who we are and how far we have traveled. In the year of America’s birth, in the coldest of months, a small band of patriots huddled by dying campfires on the shores of an icy river. The capital was abandoned. The enemy was advancing. The snow was stained with blood. At a moment when the outcome of our revolution was most in doubt, the father of our nation ordered these words be read to the people:
 ”Let it be told to the future world...that in the depth of winter,when nothing but hope and virtue could survive...that the city and the country, alarmed at one common danger, came forth to meet it.”
 America. In the face of our common dangers, in this winter of our hardship, let us remember these timeless words. With hope and virtue, let us brave once more the icy currents, and endure what storms may come. Let it be said by our children’s children that when we were tested we refused to let this journey end, that we did not turn back nor did we falter; and with eyes fixed on the horizon and God’s grace upon us, we carried forth that great gift of freedom and delivered it safely to future generations.
 Thank you. God bless you. And God bless the United States of America.

 我々が立ち向かう挑戦は新しく、それに立ち向かう手段も新しいかもしれない。しかし我々の成功の礎となる価値観は古い。それは誠実さと勤勉、勇気と公正、寛容さと好奇心、忠誠心と愛国心などだ。これらは普遍の真理である。我々の歴史を通じて前に進む静かな力となってきた。
 そうであるならば、いま求められているのはこうした真理に立ち戻ることだ。いま求められているのは新たな責任の時代〓だ。米国民の一人ひとりが自分自身、自分の国、そして世界に対して義務を負うという認識だ。いやいや請け負う義務ではなく、喜んでつかむ義務だ。難しい課題に全力で向かうことほど、精神を満たし、我々らしさを見せることはないからだ。
 これが市民であることの代価であり、約束である。我々の自信の源泉である。未知の運命を自らの手で形作れと神が呼びかけていることを我々は知っている。
 これが我々の自由の意味であり、信条である。これがあるからこそ、今日この偉大なモールにあらゆる人種とあらゆる宗教の男性、女性、子供が集まり祝うことができるのだ。これがあるから60年前ならレストランで食事をすることもできなかったかもしれない父〓を持つ男が、最も神聖な宣誓を行うためにあなた方の前に立つことができるのだ。
 だから、我々が誰なのか、どれだけ長い道のりを歩んできたかを振り返りながら、この日を覚えておこう。米国が生まれた年、最も寒い月に、愛国者の小さな集団がいてつく川沿いの消えかけたたき火に身を寄せ合った。首都(フィラデルフィア)は見捨てられた。敵は進軍してきた。雪には血がにじんだ。革命(独立)の行方が最も危ぶまれた時、建国の父は人々にこう読むよう命じた。
 「将来の世界で語られるようにしよう。希望と美徳以外は何一つ生き残ることができない真冬の日に、共通の危機にひんした都市と地方はともにそれに立ち向かった〓」
 アメリカよ。共通の危機に直面した今、この困難な冬に、我々はこの時を超えた言葉を思い出そうではないか。希望と美徳によって、氷のように冷たい流れにもう一度勇敢に立ち向かい、いかなる嵐が訪れようとも耐えようではないか。子々孫々が今を振り返った時に、我々が試練の時に旅を終えることを拒否し、引き返すことも、たじろぐこともなかったということを語り継がせようではないか。地平線に視線を定め、神の慈悲を身に浴びて、我々は自由という偉大な贈り物を運び、将来の世代に安全に送り届けたということを。ありがとう。神の祝福がみなさまにあらんことを。そして、神の祝福がアメリカ合衆国にあらんことを。
posted by 原始人 at 07:07| Comment(0) | TrackBack(0) | Report | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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