2009年01月25日

オバマ大統領、ネット演説、「米、1兆ドルの需要不足」、景気対策法、1ヵ月内に。

2009/01/25, 日本経済新聞 朝刊, 1ページ

 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領は二十四日、ラジオとインターネットを通じた国民向けの演説で「米経済は供給力と比べ一兆ドル(約八十九兆円)の(需要)不足に陥る可能性がある」と語った。総額八千二百五十億ドル(約七十三兆円)の大型景気対策による需要創出策への国民の理解を訴えるのが狙い。景気対策法案を一カ月以内に成立させることも事実上公約した。(関連記事4面に)

 米大統領は週末にラジオを通じて国民向けに演説をするのが恒例になっており、オバマ氏は就任後初めて。ネットでは動画も配信された。
 オバマ大統領は「政権は先例のない危機のなかで発足した」と強調。米国内の需要と供給の差を示す需給ギャップが国内総生産(GDP)の七―八%に達する可能性があるとの見方を示した。そのうえで、このままでは「四人家族で一世帯当たり一万二千ドル超の収入減少につながる」と警鐘を鳴らした。
 景気対策については環境分野への集中投資で雇用や需要を創出する「グリーンニューディール」に最初に言及。太陽光、風力、バイオ燃料といった代替エネルギーの生産能力を倍増する方針を示した。さらに「代替エネルギーで生み出した電気を送るための送電網を三千マイル(四千八百キロメートル)建設する」と表明した。
 景気対策を巡る議会との調整はヤマ場を迎え、共和党の反発が強まっていることから、超党派の合意は微妙な情勢だ。オバマ氏は週明けに共和党幹部と会談する前に改めて景気対策の効果と必要性を強調した。



オバマ政権、米景気対策、75%は1年半で執行―約55兆円、即効性強調。
2009/01/25, 日本経済新聞 朝刊, 4ページ

 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領は二十四日のインターネットなどを通じた国民向け演説で景気対策について雇用創出などの効果を改めて強調した。ホワイトハウス(米政府)は八千二百五十億ドル(約七十三兆円)に上る対策のうち七五%(約五十五兆円)を着手から約一年半後の二〇一〇年九月末までに執行する方針。早期執行で即効性を目指す。ただ、事業内容や規模を巡る異論はなお多く、週明けから始まる法案修正協議が難航する懸念も残っている。(1面参照)

 オバマ政権と議会が調整している景気対策案は、公共事業や環境分野への投資など五千五百億ドルの歳出と二千七百五十億ドルの減税措置から成る。議会予算局(CBO)は、歳出分野のうち三千五百五十億ドルについて、一年半で執行されるのは約四割にとどまるとの見解をまとめていた。
 ホワイトハウスのオルザグ米行政管理予算局(OMB)局長はこうした見方を打ち消すため、議会指導部に書簡を送付。その中で「CBOが調査対象としていない減税部分やほかの歳出分を含めた全景気対策では七五%が一〇年九月末までに執行される」と指摘。短期のうちに需要を下支えする効果はあると訴えた。
 景気対策の実施が遅れ、経済下支えの効果が小さいとの懸念を払拭(ふっしょく)するため、米政府は即効性を強調した格好だ。オバマ大統領は二十三日、議会指導部に景気対策法案の早期成立で協力を要請。二月半ばまでに関連法案の成立を目指すと正式に表明した。
 三十日に発表予定の〇八年十―十二月の実質国内総生産(GDP)成長率の市場予測平均はマイナス五・二%。大幅なマイナスに陥る公算が大きい。昨秋の金融危機で個人消費が失速。雇用調整も急激に進み、金融市場からは対策の早期成立と前倒し実施を求める圧力が強まっている。
 共和党のベイナー下院院内総務も景気対策が「迅速に執行されない懸念がある」と述べ、即効性に疑問を呈していた。このため超党派の合意をめざすオバマ大統領が、共和党の支持を得やすい減税策を拡充するなどの動きに出る可能性もありそうだ。
 ホワイトハウスは二十四日、景気対策の詳細を発表。この中で分野別の目標を示し、同対策の米国民への波及経路を明らかにした。環境分野では向こう三年で一千億ドルの民間投資が可能になるよう政府保証などを活用し金融支援を実施する。
 子供を抱えた勤労世帯の税制面での優遇も拡大する。対象となる子供は千六百万人になる。教育分野では、大学入学者を七百万人増やすために財政支援を拡充する。

米大統領のネット演説要旨。
 二十四日のオバマ米大統領のネット演説の要旨は次の通り。

 一、米経済は供給力と比べ一兆ドルの(需要)不足に陥る可能性がある
 一、四人家族で一世帯当たり一万二千ドル超の収入減少につながる
 一、景気対策法案に一カ月以内に署名できることを期待している
 一、景気対策により、今後五年間で三百万―四百万人の雇用を創出・維持する
 一、風力、太陽光、バイオ燃料などを使った代替エネルギーの生産を三年で倍増する
 一、延べ三千マイル(約四千八百キロ)以上の送電網を新設する
 一、エネルギー効率が悪い連邦政府ビルを改築して年間二十億ドルのコストをカット。二百五十万戸の住宅を改修し、一世帯当たり平均三百五十ドルの光熱費を削減する
 一、五年以内に医療記録を完全電子化し、数十億ドルの医療コストを削減。医療保険の加入維持を支援する
 一、一万校の学校を近代化し、最先端設備の導入で五百万人の生徒が恩恵を受ける
 一、数千マイルの道路を改修する
 一、九十カ所の主要な港湾の安全面を強化する
 一、緊急時に備えた警察の通信網を整備する
 一、数百万人へのブロードバンド(高速大容量)網を拡充する
 一、規模や範囲について疑問の声があることはわかっている
 一、問題があるから資金を使うのでなく、未来に投資する(ワシントン支局)



(けいざい解読)米新政権と銀行国有化
2009/01/25, 日本経済新聞 朝刊, 3ページ

 さっそうと登場したオバマ政権にマーケットが踏み絵を迫っている。財務長官に指名されたガイトナー氏が議会公聴会で述べた「包括的な金融安定化」だ。
 ウォール街に漂ういやな感じは、銀行国有化の懸念に行き着く。資本主義の総本山米国で、社会主義の代名詞である国有化? 上院財政委員会の質問への書簡回答でガイトナー氏は否定するが、それほど米国の金融機関は傷んでいる。

 「銀行を国有化するのではなく、バッドバンクで不良資産を買い取ってほしい」。シティグループのパーソンズ新会長は、英紙フィナンシャル・タイムズでこう訴えた。経営者は危機を肌身で感じている。
 パーソンズ会長の言及したバッドバンクは、不良資産を金融機関から買い取る公的機関のこと。米連邦預金保険公社(FDIC)のベアー総裁も必要性を訴え、ガイトナー氏も公聴会で言及した。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が十三日、講演した。
 不良資産を抱えた金融機関の立て直しには、いくつかの方法がある。株式取得による金融機関への公的資金注入。問題資産の政府保証。政府による問題資産の買い取り。買い取りを専門にしたバッドバンクをつくる手もある。
 昨年十月に成立した米金融安定化法。ブッシュ政権は七千億ドルの公的資金枠の半分に当たる三千五百億ドルを、主に金融機関の株式取得に充てた。円換算で三十兆円余り。それでも金融不安は解消しない。シティグループやバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)には公的資金を追加投入するとともに、問題資産の損失を政府が保証することにした。

 証券化商品など腐った資産を金融機関が抱えたままでは、危機の元は断てない。そこで政府の肝いりで問題資産の買い取り機関をつくる。バッドバンクだ。議長の言葉を借りれば、「現金やバッドバンクの株式を対価に、金融機関の問題資産を買い取る」わけだ。
 政府はバッドバンクに出資する。政府の信用を元手にバッドバンクが借り入れなど外部負債を募れば、レバレッジ(テコの原理)が働き、出資分が何倍にも活用できる。一見良案だ。
 問題は資産の買い取り価格に帰着する。高過ぎれば政府つまり納税者が損失を被る。安過ぎれば銀行の資本不足があらわになる。
 ただ同然の証券化商品を、ある程度の値をつけて買うのなら、バッドバンクに損失が生じる。膨れ上がった不良資産を買い取るには、「三兆―四兆ドルのコストがかかる」とのシューマー上院議員の指摘に、ガイトナー氏は答えなかった。
 その辺の不透明感があるから、株価は銀行の債務超過を心配し国有化を織り込み出した。バンカメには四百五十億ドルの公的資金が入っているのに、株式時価総額は約四百億ドル。五百二十億ドルの公的資金が入ったシティに至っては、時価総額が約二百億ドルだ。
 既存の株式を紙くずにする国有化でなくとも、万策尽きて政府が銀行の普通株を取得するような事態になると、既存の株式の価値は著しく薄まる。一時二ドル台に落ちたシティの株価はリスクに身構えたものだ。
 「今、金融を立て直すことが、皆さんのためになるのです」。不人気覚悟で国民にそう訴えられるか。「イエス・ウィー・キャン」。うめく市場は新大統領にその回答を催促している。
posted by 原始人 at 08:45| Comment(0) | TrackBack(0) | Report | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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