社保庁年金不正免除、監査など改革前倒し、局長更迭、新たに静岡など検討。
2006/05/30, 日本経済新聞 朝刊
社会保険庁は二十九日、国民年金保険料の免除などをめぐる不正手続きが広がっていることを受け、外部専門家による「特別監査官」設置などの改革を実施することを決めた。新たな不正が起きないよう現場の事務手続きも改善する。同日までの調査では違法な手続きだけで十都府県の八万二千件にのぼった。悪質な不正を報告していなかった社会保険事務局長の新たな更迭も検討し、隠ぺい体質が残る同庁を立て直す。(年金保険料の免除は3面「きょうのことば」参照)=関連記事5面に
「特別監査官」は外部の専門家が会計や業務が適切に進められているかをチェックする試み。外部人材を交えて重要な意思決定を審議する「年金運営会議」も発足。都道府県を超えた相互チェックの仕組みも導入する。
これらの対策はいずれも二〇〇八年十月に年金事業を引き継いで発足する「ねんきん事業機構」で実施する予定だった。社保庁改革法案の成立を前提に二年前倒しして今年十月から実施する。
未納者が多い若者の手続きを促すため、インターネットで支払い免除の申請手続きができる仕組みを早急に導入する。事務所から大量の免除申請などがあった場合に本庁に自動的に警告するシステムも導入する計画。
このほかの不正防止策として、(1)免除手続き処理を社保事務所で行わず、各地の事務局で一括処理するなどの事務処理見直し(2)各地の事務局に「法令順守委員会」を設置するなどの法令順守態勢の強化(3)保険料徴収など専門業務に対応した法令順守研修の充実(4)地域を超えた人事異動の大幅拡充――などを進める。
同庁の二十九日深夜までの調べによると、不正手続きは二十六都府県で十一万三千件を超えた。二十七日の公表数字に比べ件数で約四万件増えた。このうち違法手続きが八万二千件あった。
社保庁は全容解明はなお道半ばとみており、今後は社保庁本庁による各事務局・事務所への立ち入り調査を実施。二〇〇五年度のすべての免除手続き二百七十万件を洗い直す。不正が見つかった事務所には村瀬清司長官が自ら赴き指導する。関係者の処分も進める意向で、厚生労働省首脳は二十九日夜、報告を最後まで怠ったとして「静岡、埼玉の局長の更迭を検討する」と述べた。
不正な免除手続きは青森、福島などの事務局でも見つかり、合計二十六都府県に拡大。七府県は各事務局が傘下の事務所に指示した組織的なものだった。他の六府県は事務所主導の不正を事務局が容認。残る十三都県は事務所の不正を事務局が把握していなかった。
▽組 織
○会計、法令順守などに民間監査を導入(二年前倒しし十月から)
○国民からの不正告発窓口を新設(六月中にも)
▽手続き
○保険料納付免除申請のネット化
○申請書類の大幅な簡素化
▽その他
○〇五年度の免除手続き二百七十万件すべてを洗い直し
○従来の県単位の組織運営・人事異動を広域化
▼年金免除の違法手続き
本人への意思確認を全く怠ったまま免除手続きした場合は国民年金法に違反する。電話で本人に意思確認し、申請書を代筆したり手続き後に申請書をもらえば違法にはならないが、同法の施行規則には反する。
年金保険料の免除(きょうのことば)
▽…国民年金の保険料納付は義務だが、低所得者や学生には免除が認められている。免除対象になると保険料を納付しなくても加入扱いになる。免除期間分の年金は、全額免除で本来の3分の1、半額免除で3分の2を受け取れる。本人の申請をもとに審査するのが通例。
▽…一方、保険料を納める義務があるのに無断で納めないのが「未納」。現在未納率は30%台と高止まりしており、社会保険庁は2007年度までに20%以下に引き下げる目標を掲げている。保険料納付の不正な免除手続きが横行した背景には、本来保険料を払うべき人の数(未納率の分母)を減らすことで、未納率を下げる狙いがあった。
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社保庁、隠ぺい体質根深く、改革前倒し、不信解消は不透明。
2006/05/30, 日本経済新聞 朝刊
社会保険庁は二十九日、外部監査の前倒し導入など国民年金保険料の不正免除問題の再発防止策を公表した。村瀬清司長官は組織立て直しへの決意を訴えたが、国民に深く広がった同庁への不信感を解消できるか不透明だ。度重なる不祥事と地方組織の職員の隠ぺい体質が改めて浮き彫りになっており、国民の意識とかけ離れた官業体質の徹底的な改革を迫られそうだ。(1面参照)
社保庁は再発防止策の柱として、国会審議中の法案に盛り込んだ改革を二年前倒しし、外部専門家による業務監査や、都道府県単位の地方組織を東北、九州などブロック単位に再編する改革を今年十月に実施することを打ち出した。改革の早期実現が、今回のような法令違反を防ぐために効果的との判断からだ。
年金保険料を使った赤字の福祉施設建設や年金加入記録ののぞき見に続く度重なる不祥事だけに、信頼回復は簡単ではない。一連の調査過程では大阪、三重の事務局長が実際には不正手続きがあるのに「問題ない」と回答。組織改革が議論されている中でもなお隠ぺいを続ける体質が残っていることを示した。
川崎二郎厚生労働相は特に悪質な職員は二〇〇八年度に発足予定の「ねんきん事業機構」に移ることを認めない措置を検討。こうした処分の実際の対象者はごく一部にとどまるとみられ、処分を受けても厚労省本体に移るなど公務員の身分は変わらない。綱紀粛正の効果は不透明だ。
改革法案の組織再編案では職員の大半が新組織に移行するため、野党に限らず与党内にも「単なる看板の付け替え」との批判は根強い。不正手続きが全国に広がったことで民主党が主張する歳入庁構想などの解体論が勢いを増す可能性もある。
社保庁長官、規律強化を最優先。2006/05/30, 日本経済新聞 朝刊
社会保険庁の村瀬清司長官は二十九日会見し、「今やるべきことは改革をしっかりやることだ」と述べ、隠ぺい体質の払拭(ふっしょく)など組織の規律強化を最優先にする考えを強調した。進退問題は「(任命権者の)大臣に相談してやめるのはやぶさかでないが、本当に社会保険庁を変えなくてもいいのか」と語り、辞任を否定した。
不正免除が膨らんだことに関し「初めから楽して(未納対策などを)やろうという事務局が増えたのが一番ショックだった」と指摘。職員の処分については「楽をしようとした人は許せないが、一生懸命に仕事をしたがたまたま法令順守(の精神)が抜けていた人もいる。動機はよくみないといけない」と述べた。
組織内での隠ぺいに関しては「報告を求めたがなかったので結果としてあったと認めざるを得ない」と述べた。しかし「本庁からの指示は一切ない」として同庁全体の問題との疑惑は否定した。
同庁は不正に手続きされた人への対応も公表。本人に黙って手続きした事例は免除をいったん取り消した上で個別に謝罪し、改めて申請してもらう。申請書を代筆した場合は、職員が自宅などを訪問して改めて申請書を出してもらう。事後的に申請書をもらった事例は利便性を考え、手続きをそのまま承認する。
「官をかばうな」、首相厳しく批判。2006/05/30, 日本経済新聞 朝刊
小泉純一郎首相=似顔=は二十九日の自民党役員会で、社会保険庁の国民年金保険料不正免除問題に関連して「職員の中には今の政府の改革に反対している勢力があるから、この改革つぶしに乗らないように。官をかばっては駄目だ」と述べ、同庁の体質を厳しく批判した。
同時に「改革は行政のあきれた意識、無駄の実態を改めることが原点だ。長官も民間から起用した」と語り、村瀬清司長官の起用は正しかったと強調。「そういうことをもっと分かりやすく国民に説明する必要がある」と訴えた。
2006年05月30日
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