2007年06月07日

(ハイリゲンダムサミット)日米首脳、温暖化ガス削減「中印参加の枠組」一致、拉致・核で連携。攻防―数値目標、はや駆引き。

日米首脳、温暖化ガス削減、「中印参加の枠組み」一致、拉致・核で連携。
2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 【ハイリゲンダム(ドイツ北東部)=峯岸博、日高広太郎】主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)が六日夜(日本時間七日未明)、開幕する。これに先立ち安倍晋三首相はブッシュ米大統領と会談し、北朝鮮の核・拉致問題の進展に向けた連携を確認。環境問題ではポスト京都議定書について、中国やインドなども含めた「実効性のある国際的枠組み」づくりに向け協調する方針で一致した。(関連記事2、3、6面に)

 今回のサミットは二〇一二年に期限が切れる京都議定書を引き継ぐ温暖化ガス削減のあり方について道筋をつけられるかが最大のテーマ。他の二国間会談でも環境問題を協議するとみられサミットを舞台にした主要国の取り組みが本格化する。
 首相とブッシュ大統領による首脳会談は三回目で、今回は約五十分。地球温暖化対策で大統領は「中国やインドを含めた枠組みの構築が重要だ」と指摘、首相も同調した。首相は「世界全体の温暖化ガス排出量を五〇年までに半減する」とする日本の目標を説明し、理解を求めたが、削減の数値目標をめぐる突っ込んだ話し合いはしなかった。
 日本と欧州連合(EU)は「温暖化ガス排出量を五〇年までに半減、または半減以上にする」との目標で一致した。数値目標に慎重な米国がサミットでどのような姿勢を示すかが焦点となる。
 北朝鮮問題で首相は「忍耐にも限界がある」と指摘。大統領も「その通りだ」と応じた。六カ国協議の合意に基づく核関連施設の停止・封印を早期に実施するよう求めていく方針を確認。拉致問題で誠意ある対応を求めることも含め「サミットの場で強いメッセージを出す必要がある」との認識で一致した。
 首相は会談後、記者団に、米国による北朝鮮のテロ支援国家指定の解除について「日本の立場を(大統領に)説明し、理解を得た」と強調した。日本は指定解除にあたって拉致問題を考慮するよう求めている。大統領も会談後、記者団に「拉致問題を解決したいという首相の意思を強く支持していることを日本の国民に知ってもらうのが極めて重要だ」と語った。大統領は会談で「米国産牛肉の輸入問題はどうなっているか」と尋ね、首相は「食の安全を前提に対応する」と応じた。
 六日は米独、独仏、日仏などの首脳会談も相次いで開催。温暖化ガス排出削減を巡っては数値目標設定の是非だけでなく、(1)目標を「義務的な数値」と位置づけるか(2)起点となる基準年をいつにするか――などでも日米欧の思惑が食い違っており、サミットで駆け引きが展開される。
 サミットは六日夜のメルケル・ドイツ首相夫妻主催の非公式夕食会で事実上開幕。七日に本格的に討議する。八日には中国、インドなど新興国や、アフリカ諸国の首脳とも意見交換する。


首脳会談、テロ指定解除で「拉致」配慮、首相「米も理解」。
2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 【ハイリゲンダム(ドイツ北東部)=峯岸博】安倍晋三首相は六日の日米首脳会談で、北朝鮮への圧力強化をブッシュ大統領に直接訴え、米国を「日米連携」につなぎ留める狙いを鮮明にした。米朝中三カ国が核問題の議論を主導する展開が定着し、日本人拉致問題も含めて米国の役割が重みを増しているためだ。(1面参照)

 首相は会談で米国のテロ支援国家指定解除にあたっては、日本人の拉致問題に配慮すべきだとの日本の立場を説明。大統領から「理解を得た」と記者団に語った。
 サミットを利用した日米首脳会談が決まったのは開催の数日前のこと。会談時間も当初予定の二十五分間から五十分間に延長した。首相はブッシュ大統領と四月にワシントンで会談したばかりだが、日本側の強い働きかけがあったもようだ。
 ブッシュ政権は支持率低下や与党共和党の中間選挙敗北などを受け、北朝鮮政策を圧力一辺倒から対話路線にカジを切った。対米協調を掲げてきた日本の意図とは裏腹に、「米朝」の動きが日本の頭越しに進むケースもあり、北朝鮮問題で手詰まりに陥っている日本側の焦りもうかがえる。
 「北朝鮮は何ら誠意のある対応を示さず、極めて遺憾だ」。首相は会談で北朝鮮への不満を大統領にぶつけ、大統領から日本の立場への理解と支持を取り付けた。
 首相が「今後も大統領と様々な対話を積み重ねて日米関係を強化していく」と呼びかけると、大統領は「いつでもどんな時でも会談に応じる」と語った。
 北朝鮮問題で名をはせた首相。米大統領との共同歩調をアピールすることで、求心力を維持したい思惑がにじむ。


 日米首脳会談の発言要旨は次の通り。

【温暖化対策】
 安倍晋三首相 ブッシュ大統領が発表した地球温暖化対策の提案を高く評価する。
 ブッシュ大統領 中国やインドを含めた実効性のある新しい枠組み構築が大切。省エネルギーや技術革新も重要だ。

【北朝鮮】
 首相 現下の問題は北朝鮮の不誠実な対応によるところが大きい。北朝鮮は拉致問題にも何ら誠意ある対応を示しておらず、極めて遺憾。忍耐には限界がある。
 大統領 その通りだ。拉致問題やテロ支援国家の指定解除問題で日本の立場を支持する。

【牛肉輸入】
 大統領 米国産牛肉の輸入問題はどうなっているか。
 首相 輸入の見直しには食品安全委員会への諮問が必要だ。食の安全を前提に対応する。

 安倍晋三首相と同行記者団との懇談の主なやりとりは以下の通り。

【国家公務員法改正案】ぜひ今の国会で成立を図りたい。法案の重要性、国民の関心の高さからいえば与党も野党もない。教育改革、社会保険庁改革、イラク特措法など重要法案はたくさんあるが、あわせて成立を期したい。成り行き次第で色々な結果が出るが、全重要法案を通すべく努力したい。

【会期延長】今の時点では全く考えていない。参院選があるので、(提出法案は)会期内成立を目指したい。参院選は北海道から沖縄まで全選挙区で勝利を得るべく全力を尽くしたい。
【参院選の争点】年金や医師不足などへの国民の関心が高いことは十分承知している。国民に説明するのは当然だ。私は中期的な課題として憲法改正を首相で初めて政治スケジュールにのせた。このことも当然訴える。

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(ハイリゲンダムサミット)温暖化対策で協調・攻防―数値目標、はや駆け引き
2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 【ハイリゲンダム(ドイツ北東部)=赤川省吾】主要国首脳会議の開催を控え、地球温暖化対策を巡る欧州連合(EU)と米国、それに日本の主導権争いが激しくなってきた。温暖化ガスの排出量削減の数値目標を共同声明に盛り込みたい欧州。拘束力のある目標設定に慎重な米国。来年の議長国もにらみ道筋づくりに腐心する日本……。首脳らの攻防がさっそく始まった。(1面参照)

 「軸足は外交政策よりも経済問題」。今回のサミットをこう位置づける議長国ドイツ。メルケル首相はとりわけ温暖化対策にこだわりをみせ、プロディ伊首相やサルコジ仏大統領と相次いで個別会談、共同歩調の確認を精力的に進めている。
 EUは三月に開いた首脳会議で、先進国だけで二酸化炭素(CO2)などの排出量を二〇二〇年までに三割減らす目標を掲げた経緯がある。サミットでは日米加ロのほか中印などの新興国にも、明確な削減目標の策定を求める構えだ。
 ただ、サミットがEUの思惑通りに進むかどうかは微妙だ。二〇五〇年までに五〇%以上削減との数値目標で足並みをそろえた五日の日・EU首脳会議――。
 「数値だけに目を向けず世界が理解しあうことが必要」(安倍晋三首相)。「目標達成は国際社会の義務」(ドイツ政府)。努力目標なのか、義務なのか。実効性を高める決意表明にも姿勢の違いがにじみ出る。
 米国とEUの溝はさらに深い。六日にメルケル首相と会談したブッシュ大統領は、ポスト議定書の策定に向けて協力することを表明。一部メディアに対し「解決策の橋渡しをしたい」と漏らしたが、長期目標の設定については先送りの構え。
 ブッシュ政権の慎重姿勢には米国内からも批判が出ているが、コノートン米環境評議会議長は六日、長期目標について「サミットはそういうことを話す場所ではない。まず温暖化防止の枠組みが重要」と発言。各国首脳の活発な駆け引きと裏腹に、具体化への道のりの遠さも浮かんでいる。
 内政問題に手詰まり感が漂う議長国ドイツは、環境問題で指導力を発揮できなければ政権の求心力が低下しかねない。「米国と共通の立場を見つけるいい機会」と強気の姿勢を見せるメルケル首相。主要国の協調姿勢をしっかり固められないと、中国、インドなどを巻き込んだ温暖化対策の青写真が描きにくくなる。

「いつに比べて?」、基準年も焦点、日欧、負担感に隔たり。

 日本と欧州連合(EU)は温暖化ガスの排出量を半減する目標で一致したが、それを計る「基準年」は宙に浮いた。順調に温暖化ガスを減らすEUは「一九九〇年」を主張。排出量が増え続けている日本は基準年を「現状」まで引き付け、削減負担を少しでも減らしたい意向だ。サミットの本会合では、削減の数値目標に加えて基準年を巡る攻防も予想される。
 日本の二〇〇四年の温暖化ガス排出量は九〇年比で七・四%増えた。基準年を九〇年とすれば、それだけ削減しなければならない排出量が増え、産業界のコスト負担も増す。
 一方、EUは二十五カ国で〇四年の排出量が九〇年比七・三%減だった。これはドイツや英国が排出削減を進めただけでなく、新規加盟国となった東欧諸国でエネルギー効率の悪い工場を閉鎖した効果などが加算されたためだ。
 京都議定書の期限が切れる二〇一二年以降もEUの加盟国は増える方向。世界の温暖化ガスの排出量は〇四年に九〇年比で二四%も増えており「半減」のハードルは高いが、“加盟国効果”があるEUには達成できない数字でもない。
 国内だけの削減で目標達成が必要な日本では、かねて産業界にも「欧州と同列で論じるのは不公平だ」との反発がくすぶっていた。ポスト京都を巡る今後の国際交渉でも基準年の問題は大きな焦点で、あいまいな決着はあとあと重たい難題となりそうだ。


(ハイリゲンダムサミット)米独、対ロ歩調にズレ、首脳会談、「ミサイル防衛」触れず
2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 【ハイリゲンダム(ドイツ北東部)=丸谷浩史】ブッシュ米大統領とメルケル独首相は六日、主要国首脳会議(サミット)開幕を前に会談した。サミットで最大の争点に浮上してきた米国とロシアの緊張関係をめぐり、大統領は中欧に配備するミサイル防衛システムなどで欧州と共同歩調をとる布石とする狙いだ。ただ独側は「二国間の問題だ」と距離を置いており、米独の距離感は残った。(1面参照)

 「これまでのメルケル首相の指導力に感謝する」。会談後、大統領は記者団に強調した。両首脳によると、会談ではサミットの成功に向けて温暖化対策の重要性、投資の自由化などで一致。「国際紛争の解決で可能な限り共同歩調をとる」ことも確認した。ただ、米ロ関係やミサイル防衛網の問題には言及がなかった。
 ブッシュ大統領にとって、退任するブレア英首相を除けばメルケル首相は個人的な関係が最も良好な欧州首脳。サミット議長でもある首相と、昼食をともにする形で一時間半にわたって会談する日程を設定したのも、ミサイル防衛網など米欧ロにまたがる複雑な課題をにらみ、今後の理解を得るためにほかならない。
 「サミットの主要議題ではない」。独政府高官は五日、チェコ、ポーランドでの米国のミサイル防衛網整備は取り上げない考えを示した。欧州へのミサイル防衛網自体は北大西洋条約機構(NATO)の枠組みでの問題でもあり、ドイツは推進する陣営に立つ。ただロシアのプーチン大統領は「新たな軍拡競争の始まり」と激しく反発しており、米ロ双方のどちらに肩入れするのも得策ではないとの判断だ。
 ハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)の会談後の記者団への説明でも、質問は米ロ関係とミサイル防衛網に集中したが「ミサイル防衛はG8の課題ではない。米ロ関係も二国間の問題だ」と、独側の方針に歩調を合わせてみせた。だが欧州の関心は米ロ関係の今後にある。米独首脳がミサイル防衛網などには触れず、サミットでの共通点だけを押し出したことで、かえって米ロ関係に神経を使っている事情がうかがえた。

反対デモ、1万人規模に

 【ハイリゲンダム=石井一乗】サミット開催を目前にした六日も会場周辺では開催に反対するデモが続き、参加者は一万人規模に達した。一部のデモ隊と警官隊が衝突、ロイター通信によると警官八人が負傷した。デモ隊はサミット会場につながる主要道路も占拠、交通網が寸断されるなど混乱が拡大している。
 千人規模の負傷者を出した二日の衝突以降は大規模な暴動に発展する動きはないものの、会場周辺にはグローバリズム反対などを訴える集団が次々に集結している。
 デモ隊はサミット会場のハイリゲンダムを取り囲む高さ数メートルの鉄条網に向かって移動。警察隊は放水や催涙ガスなどを使って排除に当たった。
 外交官や報道陣の移動用の鉄道の線路も占拠され、運行できなくなった。会場への物資輸送の一部は海上輸送に切り替えられた。再衝突を警戒する警察は厳戒態勢をさらに強めている。


中国・胡主席ドイツ入り、外交手腕の発揮で権力基盤固め狙う。2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 【ハイリゲンダム=伊集院敦】中国の胡錦濤国家主席は六日、サミットの一環として開く主要八カ国と中印など新興五カ国の首脳対話などに出席するため、北京発の特別機でドイツ入りした。胡主席のサミット関連行事への参加は四度目だが、今年は秋に五年に一度の党大会を控えているため、外交手腕をアピールして権力基盤固めを目指す。
 胡主席は七日にインド、ブラジル、南アフリカ、メキシコとの五カ国会合に出席。サミットの焦点となる地球温暖化対策などをめぐって意見交換したうえで、八日に主要八カ国との対話に臨む。この間、日米首脳との二国間会談や、アフリカ諸国などとの会談も行う見通し。
 内政面では地方人事が一段落し、中央レベルの人事に本格的に着手し始めたところ。胡主席の続投は確実視されているが、「政権の求心力を高めるためにもサミット外交で得点を挙げ、世界の主要国と渡り合う場面を国内向けに宣伝したいと考えているはず」(外交筋)との見方が多い。地球温暖化対策などでは発展途上国の立場から中国独自の見解を打ち出す方針だ。


初参加のサルコジ仏大統領、温暖化対策、意気込み強く、米に妥協しない方針。
2007/06/07, 日本経済新聞 朝刊

 フランスのサルコジ大統領はサミット出席のため六日に現地入りし、直ちにメルケル独首相、日本の安倍晋三首相と会談した。大統領のサミット出席は初めてで、地球温暖化対策の前進へ向け一定の役割を果たそうと意気込んでいる。
 大統領は五日にはパリでカナダのハーパー首相と協議、温暖化ガスの「できる限り野心的な削減目標」が必要との認識で一致した。環境保護関連の非政府組織(NGO)代表らとも会い、温暖化対策への熱意を示した。サルコジ大統領は「悪い合意ならしない方がまし」と述べ、削減目標設定に慎重な米国に安易に妥協しない姿勢をみせている。(ハイリゲンダム=安藤淳)
posted by 原始人 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Report | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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