2007年06月17日

マニフェスト、特色競う―年金、格差、憲法…、数値目標や財源、裏付けに甘さも。

2007/06/17, 日本経済新聞 朝刊

 与野党の参院選に向けたマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろった。各党は公的年金保険料の納付記録漏れ問題を踏まえて年金制度に重点を置いた対策の充実を急ぐとともに、格差や医療、憲法問題などで特色作りに腐心している。
ただ選挙後に行動の手足を縛りかねない数値目標や財源の裏付けへの言及は甘く、政策論争の深まりには課題も残している。(各党のマニフェスト・重点政策を4面に)

 「私に一番大きな責任がある。その責任とはこの問題を解決して皆様の不安を解消していくことだ」。安倍晋三首相は十六日、遊説先の長崎市内で講演し、記録漏れ問題についての陳謝と一年以内に対象者不明の五千万件の照合を完了する方針などの対策を強調。佐賀市内の記者会見では、年金制度について「参院選で大きな争点になる」と述べた。
 自民は当初、参院選で首相の主張する教育再生や憲法改正を前面に掲げる戦略を描いていた。しかし年金記録漏れ問題への世論の反発の広がりを受けて方針を転換。マニフェストは憲法を一番目に掲げ「二〇一〇年の国会で改憲案の発議を目指す」と独自性を出す一方で、むしろ記録漏れ対策への記述を大幅に増加した。首相や党執行部は街頭演説や講演では対策をひたすら丁寧に説明して防戦に追われている。
 マニフェストに明記した対策は、参院審議中の年金支給漏れの時効を撤廃する特例法案の成立や政府方針の確実な実施に触れているにすぎない。年金を巡る混乱の主な原因は業務を担当する社会保険庁の体制や職場体質にあるとし、社保庁解体と公務員制度改革の実現を強調している。
 年金制度改革は既定路線に触れるだけで、基礎年金の国庫負担割合の引き上げの具体的な財源への記述もない。

●消費税は維持
 民主は年金問題で国民年金を含めた年金一元化と基礎年金の全額税方式の導入を提案。ただ財源は二〇〇五年の衆院選で掲げた税率三%を想定した「年金目的消費税」構想を撤回し、消費税率五%を維持したまま全額を充てる。少子高齢化に伴い不足が生じた場合に現行の給付水準が維持できるかはあいまいだ。
 年金以外の社会保障分野では、公明が子育て支援をマニフェストの最初に掲げ、児童手当の支給対象を中三まで拡大することなどを主張する。自民、公明は医師不足対策を強調し、月内にも発表する与党統一公約の柱に据える方向だ。
 格差問題を巡っては、自民は地域活性化策で「ふるさと納税」などの検討を盛り込んだが、具体的な手法はこれから。民主は所得格差是正を強調し「最低賃金を全国平均で時給千円に引き上げる」ことなどを明記する。地域活性化は生産農家への戸別所得補償制度の導入や中小企業への法人税率半減を目玉に据えるが財源への説明は乏しい。
 年金記録漏れ問題とともに今国会で焦点となった「政治とカネ」の問題を巡っても、自民、民主はいずれも今国会に提出した政治資金規正法改正案の内容に触れた程度となっている。
 選挙で政党や候補者が示す公約。「はっきり示す」というイタリア語が語源で、数値目標や実現の期限などをできるだけ盛り込み達成度が検証できるのが特色。各党が冊子やパンフレットにして配布するのが一般的だ。
 日本では二〇〇三年に北川正恭三重県知事(当時)らが提唱。同年十一月の衆院選で民主党が導入を決め、与野党によるマニフェスト選挙が定着した。四月の統一地方選挙から首長選でも配布が可能になり、今夏の参院選から配布場所が拡大される。

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特集―参院選、各党のマニフェスト・重点政策、16日現在。
2007/06/17, 日本経済新聞 朝刊

 与野党各党は参院選で有権者を引き付ける有力な武器としてマニフェスト(政権公約)などの内容に知恵を絞っている。
自民、公明、共産、国民新、新党日本はすでに素案を公表済みで、民主、社民も重点項目を固めた。
当初は「格差問題」や「憲法改正」が争点とみられたが、各党は注目度が高まった「年金問題」への対応策に力を入れている。
数値目標や達成の期限を明示するマニフェスト本来の目標からは後退も目立ち、選挙戦の本番をにらんで早くも追加公約などで補強する動きが出ている。(2面参照)

自民

○社会保険庁を廃止・解体し、業務を6分割。非公務員型の新法人に移行
○対象者不明の年金記録5000万件は1年以内に照合完了。5年の時効を超えても受給可能に
○厚生・共済年金を一元化。基礎年金の国庫負担割合を2009年度までに2分の1に引き上げるための法整備
○新たな高齢者医療制度の創設など医療保険制度体系の見直し
○07年度メドに社会保障給付全般や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現
○ふるさとへの貢献を支援する税制や寄付金のあり方を検討
○改正パート労働法の着実な施行を通じ、均衡待遇の確保や正社員への転換を促進
○最低賃金法を改正し、適正な賃金引き上げを実現
○団塊世代などシニア人材の技術やノウハウを活用する「新現役チャレンジプラン」を創設
○医師不足の地域や診療科で勤務医の養成増。研修医の都市偏在を是正するため、臨床研修病院の定員を見直し
○資金管理団体の不動産所有への規制や、事務所費などの透明性のあり方について法改正し、コンプライアンス(法令順守)を強化 
○知事や政令指定都市市長の連続4選目の立候補禁止を立法化する。一般市町村長の多選は条例で禁止できるよう慎重に検討を進める
○衆参両院の憲法審査会の議論を主導しつつ、10年国会での憲法改正案の発議を目指し、新憲法制定の国民運動を展開
○個別具体的な類型に即し、集団的自衛権の問題を含めて憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤を再構築
○日米同盟を強化し「自由と繁栄の弧」を形成
○北海道洞爺湖サミットに向け、環境外交を展開
○世界貿易機関(WTO)交渉、経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)交渉に全力
○国家の威信をかけ拉致問題を解決
○自衛隊の海外派遣のための国際協力基本法を制定
○10年代半ばでの国・地方の債務残高対GDP(国内総生産)の安定的な引き下げを達成しうる財政の確立
○人口減少下でも持続的、安定的に民間需要主導で成長する「日本型経済成長モデル」を実現、実質2%台半ばの経済成長を目指す
○公務員の人事制度全般を見直す基本法案を次期通常国会に提出
○国の行政機関の定員を10年度までに約1万9000人(5.7%)純減する目標を確実に実現
○独立行政法人の組織・業務全般を整理・縮小
○地方公務員の定数の削減・給与の適正化
○教員免許更新制や不適格教員を退場させるシステムの円滑な実施
○学習指導要領全体を見直し、全国学習状況調査を適切に活用し、子どもに規範や礼儀を教育
○育児休業や子育て期の短時間勤務などを利用しやすい職場環境づくりを支援
○今年度中に政府公用車にバイオ燃料を完全導入
○クールビズ定着とサマータイム導入を検討。「1人1日1キログラム」の二酸化炭素(CO2)削減
○13年までに農水産物輸出額を1兆円規模に
○道州制を推進。北海道を先行モデルに
○3年以内に「新地方分権一括法案」を提出

民主

○社会保険庁を解体、国税庁と統合した「歳入庁」を設置。税金と保険料の徴収を一元化
○国の責任でコンピューター上のデータとマイクロフィルムや紙台帳の記録を照合
○「年金通帳」を全加入者に交付
○国民年金を含め年金制度を一元化、基礎年金と所得比例部分の2階建てに
○基礎年金の財源は全額税方式、高額所得者への給付を制限。消費税率は5%に据え置き、全額を基礎年金の財源に
○3年をメドに最低賃金の全国平均を時給1000円に
○パート・契約社員と正社員の待遇を均等に
○1日1000円、月3万円相当の就労支援手当などでフリーター、ニートの就職支援
○公的年金控除の見直しなどの所得税改革を実施する
○医師・看護師の配置を適正化し、医師不足を解消するための緊急行動計画を策定
○すべての地域で最善のがん治療が受けられる体制整備
○すべての政治団体の1万円超の支出について、領収書の政治資金収支報告書への添付義務付け
○領収書の保存期間を現行の3年から5年に
○迂回(うかい)献金の禁止
○過失により150万円超の寄付を収支報告書などに記載しなかった場合、罰則を設ける
○憲法は一時の内閣が目指すべき社会像やみずからの重視する伝統・価値をうたったり、国民に道徳や義務を課すための規範ではない
○05年秋の「憲法提言」をもとに論議し、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討する
○日米両国の対等な相互信頼関係を築く
○中国、韓国をはじめアジア諸国と信頼関係構築
○拉致問題への認識の共有を図りつつ、主体的外交を展開
○国連の要請に基づき、主体的判断と民主的統制の下で積極的に国連平和活動に参加する
○3年以内に一部の大都市を除き高速道路無料化
○大企業による不当な押し付け販売やサービス強要を禁止する「中小企業いじめ防止法」の制定
○中小企業向け予算を現行の3倍に
○ベンチャー企業の株式購入時に税額控除できる制度の導入などで「100万社起業」達成
○規制の対象とする天下り先に特殊法人と独立行政法人、公益法人を追加
○特殊法人などの役員の天下りも国家公務員と同様に規制
○官製談合防止法を改正。公務員OBも対象に
○国家公務員の総人件費を3年間で2割以上削減
○月2万6000円の「子ども手当」を中学卒業まで支給
○出産時に国が1人あたり20万円の助成金を支給
○教員の養成課程を6年にし、研修を充実させる
○教育への財政支出を5割増
○高校を希望者全入とし無償化
○50年までに日本の温暖化ガス排出量を50%削減(1990年比)
○地球温暖化対策税を導入
○風力、太陽光など再生可能エネルギーの割合を20年までに10%程度に引き上げ
○全農家に総額1兆円程度の戸別所得補償制度

公明

〈年金・社会保障〉…
○基礎年金番号に統合されていない5000万件を早急に調査し、受給者へは08年8月まで、被保険者へは09年3月までに通知
○ドクターヘリを5年以内に全国50カ所に配備
〈再チャレンジ〉…
○新規学卒者のミスマッチ縮小のための若年者ジョブサポーターを拡充
○中堅所得者が負担に応じた良質な賃貸住宅を選別できるよう、優良賃貸業登録制度を創設
○中小企業対策の推進などにより地域の活性化を進める
〈政治改革〉…
○18歳選挙権を実現
○戸別訪問による選挙運動の解禁
〈憲 法〉…
○3年後を目途に加憲案をまとめることを目指す
〈財政・経済〉…
○産学官の連携強化による研究開発投資、人材育成など総合的な推進を図る
○中小零細企業への貸し渋りなどの影響を防ぐために小口零細企業保証制度を導入
○新産業育成、規制改革により新たな雇用を500万人創出
〈行革・公務員制度〉…
○国・地方の公務員数を1割削減
○101の全独立行政法人の徹底した効率化・合理化
○国・自治体の申請・届け出などのオンライン利用率を10年度までに50%以上に
〈教育・少子化〉…
○小中学校で保護者や地域住民が授業で教員をサポートする「教員サポーター」を導入
○有利子奨学金の月額貸与限度額を10万円から12万円に引き上げ
○児童手当の支給対象を中学3年生までに
○出産育児一時金の現行35万円から50万円への引き上げを目指す
〈その他〉…
○50年までに温室効果ガス50%削減を目指す
○日中共同出資で「日中環境基金」を創設、環境問題に取り組むための資金面でのバックアップ体制を構築
○合併で1000自治体目指す

共産

〈年金・社会保障〉…
○年金保険料の納付記録をただちにすべての受給者、加入者に送る
○「緊急福祉1兆円プラン」を実現
○物証がなくても、申し立てや証言などを尊重して年金を支給する
○すべての厚生年金、国民年金の手書きの納付記録と、社会保険庁のコンピューターの納付記録を徹底的につきあわせ、修正する
○社会保険庁解体は国の責任逃れであり、年金保険料の流用廃止や天下り防止などの抜本改革が重要
○国民年金保険料を1人1万円引き下げ
〈格差問題〉…
○最低賃金を引き上げ、ワーキングプアをつくらない
○非正規で働く人の正社員化
○サービス残業を根絶する
〈政治とカネ〉…
○企業・団体献金を全面廃止
○政党助成金制度を廃止
○官製談合、高級官僚の天下り廃止
〈憲 法〉…
○憲法改悪に反対
○集団的自衛権は行使できないという政府の憲法解釈の変更に反対する
〈外交・安保〉…
○日米軍事同盟の再編強化に反対
○米軍再編に反対、3兆円の負担を中止
〈財政・経済〉…
○消費税増税は貧困と格差を広げる不公平税制であり、反対する
○大型公共事業のむだを削減する
○道路整備や電源開発などの特定財源を一般財源化する
○公共事業は福祉・教育・防災・環境などくらしに密着した分野中心に転換
○中小企業の営業への直接支援を進める
〈教育・少子化〉…
○児童手当を小学6年生まで月額1万円に倍増するとともに、支給対象の18歳までの引き上げを目指す
〈その他〉…
○CO2排出を12年度までに90年比6%削減するため、あらゆる手を尽くす
○原子力発電所の新増設をやめ、原発から段階的に撤退

社民

〈年金・社会保障〉…
○保険料納付の立証責任を国に
○年金加入期間や保険料納付履歴などが照会できるカードを導入
○全額税方式による月額8万円の「基礎的暮らし年金」と所得比例年金の2階建て
〈格差問題〉…
○残業料率を現行の25%から50%へ引き上げ。月80時間を超える時間外労働の全面禁止
○派遣労働はソフトウエア開発など専門性のある一部職種に限定。製造業への派遣は禁止
○パートを厚生年金の対象にするなど、非正規雇用の勤労者の社会保険適用を拡大
〈政治改革〉…
○政治団体のすべての支出への領収書添付。政治資金監視のため第三者機関の設置
○世襲立候補を制限
〈憲 法〉…
○集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の変更に反対
〈財政・経済〉…
○所得税の最高税率を50%とし、累進性を強化
○基礎控除の38万円を76万円に倍増
○法人税率を34.5%以上に引き上げ、大企業に有利な法人税見直し
○特別会計の見直し。積立金や剰余金を年6兆5000億円以上捻出(ねんしゅつ)し、社会保障の財源に
〈行革・公務員制度〉…
○天下りの禁止、官製談合防止・根絶のための法整備
〈教育・少子化〉…
○教育予算をGDP比5%に引き上げ。20人学級の早期実現と教職員の30万人増
○高等教育の無償化。私学助成を拡充し、公立と私立との学費の格差を縮小
〈その他〉…
○再生可能エネルギーの割合を20年までに20%に
○日本の温暖化ガス排出量を20年までに20%削減
○森林整備予算を1300億円に拡充。森林保全や育成のため、10万人以上の雇用確保。林業に直接所得補償制度
○すべての農家へ直接所得補償制度。食料自給率を50%、飼料自給率を30%に
○選択的夫婦別姓を実現

国民新

〈年金・社会保障〉…
○年金保険料の納付記録漏れの完全照合を早期に実施する。照合できないものは申請通り認める
○基礎年金は全額税方式。厚生、共済年金を一元化
〈格差問題〉…
○大資本、高所得者層への増税、中小零細企業と中低所得者層への緊急減税
〈政治改革〉…
○衆参の議員定数を半減
〈財政・経済〉…
○参院選後に郵政民営化見直し法案提出。郵便・貯金・保険の3事業の枠組みを堅持
〈教育・少子化〉…
○伝統文化を尊重し、時代に見合った修身教育や公共の精神を涵養(かんよう)
〈その他〉…
○高齢化率の高い地域への地方交付税の配分を拡充
○農林水産業に所得補償

新党日本

〈年金・社会保障〉…
○毎月の積み立て実績と将来の支給金額を明確に印字する「年金通帳」の導入
○社会保険庁の廃止・民営化は年金制度の問題先送り
〈財政・経済〉…
○今後も道路や施設を造り続けて財政破綻するのではなく、今あるものをなおして安心・安全な未来をつくる
○消費と景気の失速を防ぐためにも、増税なき財政再建
〈教育・少子化〉
○現実を出発点とした帰納的な発想と選択で仕組みを改めていかなければ、人口減少の超少子化・超高齢な社会を乗り切れない
〈その他〉…
○土地改良や治山事業など農林土木に莫大(ばくだい)な予算を垂れ流す選択を改め、農業生産者と消費者がともに幸せの利潤を得られる関係を構築
posted by 原始人 at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | Report | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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