2008年01月29日

★ソロスの歴史的発言とアメリカの危機(転載)

         ロシア政治経済ジャーナル No.498 2008/1/29号
http://archive.mag2.com/0000012950/index.html
  全世界のRPE読者の皆さまこんにちは! いつもありがとうございます。北野です。
日本でどの程度取り上げられているかわかりませんが。ソロスさんがダボスで超爆弾発言をしました。↓

<世界はドルの買い増しに消極的=ジョージ・ソロス氏[ダボス(スイス)23日 ロイター]
 著名投資家のジョージ・ソロス氏は23日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、世界的にドル離れが進んでいるとの認識を示した。同氏は「金融市場には保安官が必要だ。世界はドルを買い増すことに消極的だ」と発言。>

「全然爆弾発言じゃないだろ!」(怒)  まあまあ、爆弾発言はこの後です。↓

<「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。>(同上)

↑ え”〜〜〜〜〜〜〜〜! いいんですか、こんなこと言っちゃって!
  私が05年1月発売の「ボロボロになった覇権国家」(詳細は→http://tinyurl.com/dypky)および「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日」(詳細は→http://tinyurl.com/yro8r7)およびメルマガで一貫して主張してきたこと。いろいろと批判のメールもいただきましたが、ついにソロスさんも認めてしまった。今回は、ソロス発言にいたるまでの経緯を書いていきます。

▼ドルの歴史1(1945〜ニクソンショックまで)

  現在起こっている問題は、「サブプライム問題」といわれますが、本当の原因は大昔までさかのぼります。
  第2次大戦が終わり、アメリカは天下を取りました。敵だった日本・ドイツ・イタリアをぶちのめし。味方だったイギリス・フランス・ソ連・中国もボロボロ。アメリカは当時、世界の工場であり、世界最大の軍事大国。世界で唯一核兵器を保有する国。まさに、完全無欠のスーパー覇権国家。そして、当時の通貨体制はブレトンウッズ体制=金(きん)ドルシステム。アメリカは、「金1オンスを35ドルと交換する」ことを保証。ドルは基軸通貨としての地位を確立したのでした。
  しかし、夏の後には秋がくる。アメリカ合衆国も、その運命から逃れることはできません。60年代。日本や西欧諸国の経済が復活し、アメリカの貿易収支はどんどん悪化していきました。アメリカが貿易赤字になるとどうなるか。貿易相手国の方にドルがどんどんたまっていく。そして、西欧諸国の特にいじわるなフランスなどは、手持ちのドルをどんどん「ゴールドに換えてくれ!」と迫ってくる。要するに、アメリカから金(きん)が大量に流出していく。
  困ったアメリカ。1971年8月、ニクソンは「金・ドル兌換の停止」を宣言(ニクソンショック)。これで、ドルは金の裏づけのないタダの紙切れになった。しかし、経済的にも軍事的にも他国を圧倒するアメリカのドルは、「他にかわりがない」という一点で、その後も基軸通貨の地位を維持したのです。

▼ドルの歴史2(レーガンの時代)

  アメリカ経済は、60年代から日本と西欧諸国に押され、地位が相対的に下がっていきました。70年代になると、日本が世界の工場になった。アメリカの製造業者は、安い労働力を求め、どんどん外国に流出していきます。80年代のはじめにレーガンさんが大統領になったとき、もうニッチもサッチもいかない状況だった。そこで、レーガンさんとブレーンたちは、「もう製造業はいいや」とあきらめます。美しい理論もついていました。「人類社会は1、農業社会 2、工業社会 3、情報化社会へと進む。アメリカは工業社会を卒業して情報化社会に進むので、ものづくりはやらなくていい」(^▽^)
  それでどうしたか? レーガン政権は、金融業界の規制を撤廃し自由化します。さらに、81年と86年に大型減税を実施。金融業の自由化で、銀行がばたばたつぶれたにもかわらず、レーガン時代、景気は非常によかったのです。
その一方で、深刻な問題が起こりました。
第1に、財政赤字と貿易赤字が膨大になった。
第2に、アメリカは世界最大の債権国だったが、世界最大の債務国になった
第3に、製造業はほとんど壊滅状態

▼ドルの歴史3(クリントンの時代)

  レーガンさんの後を継いだブッシュパパ。彼の時代、世界的大事件がドンドン起こります。
89年 ベルリンの壁崩壊。90年 東西ドイツ統一。91年 ソ連崩壊。
ブッシュパパは冷戦を終わらせ、アメリカは再び天下をとったのです。
宿敵ソ連は崩壊。経済の宿敵日本はバブル崩壊で暗黒の15年に突入。欧州では、豊かな西欧が貧しい東欧を抱え込み苦しい。中国はまだ弱小パンダで、無視できる存在。
とはいえ、アメリカも深刻な問題を抱えていました。それが、財政赤字と貿易赤字の問題。
1992年には、元大統領諮問委員 H・フィギー・Jrさんが、「1995年合衆国破産」(http://tinyurl.com/7ufqg←名著です。ご一読を。)を出し、大騒ぎになります。
なんといっても元大統領諮問委員が「アメリカ合衆国はこのままいけば1995年に国家破産する!」と宣言したのですから、当然ですね。

▼アメリカの特殊性

  アメリカは世界最大の債務国でありながら、どうして存在していられるのでしょうか? 普通の貿易赤字国では何が起こるのでしょう?。通貨が下がりつづけ、輸入品の値段が高騰、インフレが起こります。
例を挙げましょう。1994年のメキシコ。北米自由貿易協定(NAFTA)が発効したのは、94年1月。結果、アメリカからの輸入が急増し貿易赤字が拡大していきます。貿易赤字になると、赤字国の通貨が安くなる。メキシコ政府は、必死でペソを買い支えました。しかし同年12月、セディジョ大統領は、「これ以上ペソを維持するのは無理だ!」とあきらめます。そして94年12月20日、ペソを15%切り下げ。これをきっかけに、資本が一斉に逃避し、外貨準備が底をつき、通貨危機に陥ったのです。通貨危機の影響で、メキシコの国内総生産(GDP)成長率は95年、マイナス6.9%。インフレ率は52%。どうです? 普通の国では、一年の貿易赤字でこの結果。
ところが、アメリカではこういうことが起こらない。皆さんご存知のことと思いますが、理由は二つあります。
 1.ドルが基軸通貨(国際通貨・世界通貨)だから
ドルは世界通貨なので、需要が多い。だからいくら刷っても刷ってもなかなか下がらないのです。 どんな需要? ・アメリカと他国の貿易決済通貨として ・他国と他国の貿易決済通貨として ・世界各国の外貨準備として ・世界中の民間人の貯金として 等々。
 2.アメリカがドル還流システムをつくったから
貿易赤字でドルがどんどん流出していく。でもそれがリターンすればいいですね。どうやって?
例えば、・高金利(ゼロ金利の日本からどんどん金が来る) ・米国債(日本や中国がどんどん買ってくれる) ・株(外国人がアメリカ企業の株を買う) ・不動産(外国人がアメリカの不動産に投資する) 等々。
この二つの要素がきちんとしているかぎり、アメリカは永遠に借金しつづけることができるのです。
  これを大前研一先生はなんといっているか。<この種の「債務」がアメリカの害になることはない。アメリカはブラジルとは違う。ブラジルの場合には、国際的に通用する通貨で、対外決済を行なう必要がある。それができないと、どこからかドルを借りてこなければならない。それに対してアメリカは、自国通貨のドルで決済することができる。ブラジルにとって問題なのは、現在同国で起こっているように、自国通貨の価値が下がれば、借りようとするドルが相対的に高くなることである。このような「債務の悪循環」は、国際決済通貨であるドルを国内経済でも使っているアメリカの場合には起こらない>(「ボーダレスワールド」大前研一248p)

で、クリントンさんは、国家破産寸前のアメリカ経済をどうしたか?
▼ITバブル
  一言でいえば、クリントンと側近たちは、ドル還流システムを強化したのです。強化するとはつまり、「アメリカに投資すれば大もうけできますよ!」と宣伝し、自発的にドル買いをさせる。具体的にはITバブルを起こした。
90年代は、欧州・中南米・アジア・ロシアで金融・通貨危機が起こりました。97年にアジアで通貨危機が起こったとき、マハティールさんは「ソロスのせいだ!」と非難しましたが。
いずれにしても「やっぱり投資するならアメリカよね」ということになり、株価が急騰します。ダウは95年の4000ドルから00年には12000ドルまで3倍化(!)。
皆さん、5年で300%の投資っておいしくないですか? クリントンさんは史上最強のラッキーガイ。
彼は、IT革命と空前の好景気のおかげで、(モニカさんと不適切な関係をしたにもかかわらず)偉大な大統領の仲間入りをしたのです。

▼不動産バブル
  これに対し、ブッシュは運が悪いというべきでしょう。00年から01年にかけて、ITバブルがはじけてしまった。で、どうしたか? FRBは01年、なんと11回(!)も利下げをした。その金はどこに回ったかというと、不動産にまわった。不動産価格は以後07年まで上昇をつづけ、アメリカ経済の牽引役になります。ドル還流という観点から見ると、「ITバブルは弾けましたが、今度は不動産に投資すれば儲かりますよ!」(^▽^)
  で、今大騒ぎになっている、「サブプライムローン問題」ってなんだ。説明する必要もないと思いますが、サブプライムローンとは、信用の低い(年収300〜400万円)人たちへのローン。お金のない人たちが、ローンを組んで家を買った。ところが、返済できない人の割合がなんと15%にも達してしまった。このアメリカの問題がどうして、世界中で大騒ぎになったのか。シティーとかメリルリンチ等々の金融機関がサブプライムローンを証券化し、世界中で売りさばいていた。フィッチとかムーディーズが「トリプルA」の格付けを出すもんだから、世界中の投資家が買い捲っていた。

▼減税・利下げ、そして・・・
  ITバブル崩壊時を見ると、ブッシュ政権は、大型減税を実施しました。さらに、FRBは01年11回の利下げをした。公定歩合は1年間で5.75%から1.25%まで下がった。
もう一つ見過ごせないことがあります。数字には出てきませんが、01年のアフガン攻撃と03年のイラク攻撃が、アメリカの景気回復に貢献しているということ。
  今回はどうでしょうか?。ブッシュは1月18日、個人・法人減税を柱とする対策を発表しました。規模は16兆円程度。しかし、株の下落は止まらなかった。FRBは1月22日、0.75%の利下げを発表。株はその後急騰しました。今後も利下げはつづくことでしょう。こう見ると、アメリカ政府の対策は、ITバブル崩壊時と同じです。
もう一つ、効果の高い公共事業(イラン攻撃)が欲しいところでしょう。

▼とはいえ・・・
  ITバブル崩壊、住宅バブル崩壊を世界的観点で見ると、「ドル還流システムがやばくなっている」となります。利下げがつづくことで、ドル離れはますます加速することでしょう。アメリカ政府はIT・住宅バブルの後、(戦争のほかに)何を牽引役に選ぶのでしょうか?、
とはいえ、ITバブル崩壊時(00〜01年)と現在では決定的に事情が異なっています。当時、もう一つの柱=ドル基軸通貨体制は磐石だったのです。
  今はどうでしょうか?。1999年、ユーロ誕生。2000年、フセイン、原油の決済通貨をドルからユーロにする。2001年、9.11とアフガン戦争。2002年、ユーロ現金流通開始。2003年、イラク戦争。アメリカ、イラクの原油決済通貨をユーロからドルに戻す。2006年、ロシア、ルーブルでの原油輸出開始。2006年、ユーロの市場流通量がドルを超える。2007年、プーチン、「ルーブルを世界通貨(基軸通貨)の一つにする!」と宣言。2007年、イラン、原油の決済通貨をユーロ・円にする。2007年、中東産油大国がつくる湾岸協力会議は、「2010年に共通通貨をつくる」ことを確認。
どうですか? 不動産バブル崩壊で、還流システムも心配。ドル基軸通貨体制も、ほとんど崩壊寸前まで来ていることがわかるでしょう。
これらの事実を全部理解した後、ソロスさんの発言をもう一度引用しておきます。

<「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。>(ジョージ・ソロス ロイター1月24日)

▼なぜ?
  なぜソロスさんはこんな爆弾発言をしたのでしょうか?。ソロスさんのブッシュ嫌いは有名です。なぜか?。ブッシュは、アフガン・イラクを攻撃し、今度をイランを攻撃したい。戦争の時代になると、全世界でナショナリズムが高まる。すると各国は、人の流れ・資金の流れへの規制を強めるのです。(例、ファンドの規制、マネロン規制、オフショア規制、投資規制等々)
ソロスさんは投資家。投資家というのは、グローバル化が進み、国境がなくなり、世界共通ルールができて欲しい。それが一番儲けやすい環境ですからね。別に、ドルが基軸通貨でなくても儲かればそれでいいのです。
ブッシュ政権は世界を緊張させ、グローバル化と反対の方向にむかわせている。そんなわけでソロスさんはブッシュを非難しているのでしょう。ちなみにグリーンスパンさんやバフェットさんもブッシュに批判的です。

<「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。>(ジョージ・ソロス ロイター1月24日)

アメリカはなんでこうなっちゃったのか。もっと細部まで知りたい人は、下の情報をゲットしてください。詳細な資料つきで全部わかります。(おわり)

「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日-一極主義vs多極主義」(草思社)(詳細は→ http://tinyurl.com/yro8r7 )PS2 「あとがき」からお読みください。
posted by 原始人 at 14:33| Comment(0) | TrackBack(0) | Report | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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